EVへのシフトを否応なしに迫られる自動車業界。数年後には不要になってしまう部門もあり、新たな仕事を生み出すことができなければ、多くの従業員が路頭に迷うことになりかねません。こうした課題を抱えた企業の経営者が取るべき道を説くのは、メルマガ『『ゼロ秒思考』赤羽雄二の「成長を加速する人生相談」』著者で、世界的なコンサルティング会社で14年間もの勤務経験を持つ、ブレークスルーパートナーズ株式会社マネージングディレクターの赤羽雄二さんです。赤羽さんは、複数の新規事業を立ち上げて取捨し改善していく「リーンスタートアップ」の方法をレクチャーします。
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自動車がEVで置き換えられるのは必至。どこから、どうやって対策を考えればいいのか
Question
工学部大学院を出て、大手自動車メーカーの商品企画部で10年です。ご存じのように自動車がEVで置き換えられるのは必至ですが、対策が浮かびません。というのも、社員が数万人もいる中でいったい何をどう考えたら、生き残りをかけた事業転換ができるのか、意味ある新事業を生み出すことができるのか、雲をつかむような話で、部内でもいっこうに意見がまとまりません。どこからどう手をつければいいでしょうか。
赤羽さんからの回答
ご相談どうもありがとうございます。お気持ち、大変よくわかります。日本企業はそうやって過去20年あるいは30年、事業構造改革をサボってきました。EVが本当の意味でエコであるかどうかに関わらず、世界の世論がそのようになってしまっていて、極めて政治的結論であり、不当だとも思いますが、もうやるしかありません。
通常は、一つの産業が次の産業に移り変わるのに数十年以上もかかり、やりようによっては生き延びる企業も少なからずあるわけですが、化石燃料からEVへの変革は問答無用で進みます。まずは、この方針転換を社長以下、経営陣から事業部長、部長クラスまで合意する必要があります。おかしいとか、どうしてとか、そういう議論はもう1秒もしている場合ではありません。
生き残るための鍵は、1万人を超すであろう社員に新しい仕事を見つけることです。まだ体力に余裕がある今、新事業への転換を徹底的に進める必要があります。すなわち、今後5年間、毎年かなりの数の新事業を立ち上げていくことです。新事業が全部成功することはありませんので、お勧めは、半年ごとに5事業、それを10回繰り返して合計50事業にチャレンジします。
参照:経営改革を進める第3の鍵: 複数の新規事業立ち上げ-リーンスタートアップ | ブレークスルーパートナーズ
実際にうまく行くものは、よくて1/3、妥当な線としては1/5、すなわち10事業程度になります。続けていくと、会社として新事業を生み出すスキルが蓄積されていきます。
6ヶ月間では、最初の2ヶ月で市場・顧客分析、事業アイデアの創出、価値仮説・成長仮説構築(顧客ニーズ、市場・事業規模、競合優位性)、次の4ヶ月でMVP(実証ミニプロダクト)の開発・試行・ピボット・MVP修正・試行を繰り返します。6ヶ月たったところで事業化提案をするか、そこでいったんクローズするかを決めます。各プロジェクトは、それぞれ強力なリーダーのもと、数名のメンバーで検討を進めます。全員フルタイムが必須です。
新事業の分野は、自動車の周辺分野、EVの各種分野、EV時代に必要となる各種分野、自動車開発・生産力の転用でできるロボット、産業機械、医療機械などの分野、あるいは、過剰労働者の受け皿としての人材派遣、メンテナンス、総務・管理業務等の分野など、多岐にわたります。これらを社長主導で本気で進めることしか生き残りの道はありません。
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