なぜコロナ対応で「日本が一人負け」しているのか?上昌広医師が指摘した真の理由

2022.01.27
by 上昌広
 

コロナパンデミックで、世界は非接触を希望した。この結果、在宅検査が急成長した。例えば、昨年3月、米食品医薬品局(FDA)は、米キュアヘルス社が開発した自宅で検査できる簡易核酸検査に緊急使用許可(EUA)を与えた。医師の処方箋が不要で、所用時間は約20分で、PCR検査との陽性一致率は97%だ。

欧米で検査数を増やすことができたのは、このような自宅で簡単に実施できる検査が開発され、オンラインで購入できるようになったからだ。このような検査キットの配送から、医療データとして利用するまでの、社会システムが、2年間の試行錯誤の末、確立された。だからこそ、バイデン大統領は、昨年12月、全国民に無料で検査を受けることができると宣言することができた。

日本は対照的だ。確かに、医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、「体外診断用医薬品」として50種類の検査キットを承認している。ただ、このような診断キットは、薬局で薬剤師が対面販売しなければならない。非接触とは程遠い。

我々は、もっと世界から学ぶべきだ。欧米は、検査をフル活用し、オミクロン株の流行下でも社会活動を継続している。1月12日、米バイデン大統領は、対面授業を継続させるために、学校向けに配付する検査キットを毎月1,000万回分追加すると発表しているし、英国政府は、1月17日、コロナ感染後の自主隔離を、検査陰性の場合に限り、従来の7日から5日間に短縮した。1月20日、イスラエルではコロナ感染者と接触した小児は、週に2回、抗原検査を受け、陰性を確認するという条件つきで、隔離を中止した。

我が国のコロナ対策の基本的姿勢は間違っている。岸田総理は早急に感染症法を改正すべきだ。その際のポイントは、国家の権限を強化し、民間病院に無理矢理感染者を押し付けることではない。検査、治療、さらに隔離を受ける権利を感染症法で保障することだ。いまこそ、世界から学ぶべきである。

 

上 昌広(かみ まさひろ)
医療ガバナンス研究所理事長。1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

image by: Shutterstock.com

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