その条件を補助線として眺めると、3ルートのうちウクライナの重要目標への侵攻の可能性が現実味を持つのはベラルーシ国境から首都キエフをうかがうルートです。
これなら他の2ルートのように100キロ圏を越えて兵站の問題で作戦が頓挫したり、ドニエプル川の渡河作戦で阻止されたりする恐れもなくなります。軍事作戦の条件となる地面が凍結する短期間の決戦も可能です。
だからこそロシアはベラルーシとの大規模軍事演習を2月に計画し、強い圧力を加えようとしていることがわかります。これに加えて黒海沿岸のオデッサ周辺への強襲上陸作戦の構えも、圧力の一環として無視できないレベルになるでしょう。
このように、ロジスティクスの面から眺めると違った風景が見えてきます。
それなのに、いまだに台湾有事について、中国の海上輸送能力や台湾側の上陸適地という本格的な上陸作戦の条件がすっぽり欠け落ちた議論が横行しているのは、どうしたことでしょう。
日本は、戦略的にロジスティクスを考えることの重要性を第二次大戦の教訓から学んでいないと言わざるを得ません。
コロナもウクライナも台湾も、日本を戦略的に鍛える教材ばかりです。岸田文雄首相も、高市早苗自民党政調会長も、そういう角度から国家の司令塔機能を機能させてもらいたいものです。(小川和久)
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