どこに潜んでいた?オミクロン株の起源が遺伝学的に「2020年3月」の衝撃

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デルタ株に変わって世界中でまたたく間に広がったオミクロン株。日本でもあっという間に過去最高の新規感染者数を塗り替えてしまい、まだその勢いは衰えていません。驚くべきは、約30箇所もの変異を遂げたこの株の起源が2020年3月に遡るということ。これほど長い間潜み続けられた理由として3つの説を紹介するのは、メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さん。中でも特定の人体内に潜伏しての変異説を有力視する山崎さんは、新型コロナウイルスとの持久戦はまだまだ続くと訴えています。

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『どこからオミクロン』のこと

オミクロン株には大きなミステリーがある。それは今まで一体どこに潜んでいたのか、ということである。一般的にウイルスはその遺伝情報において変異箇所が多重的なものほど世代を経た古株と推測することができる。

例えばである、
ウイルス甲 変異箇所A
ウイルス乙 変異箇所AB
ウイルス丙 変異箇所ABC
とあれば、乙は甲より前に、丙は乙より前に現出したものであると考えられる訳である。

[以下、本稿執筆に当たっては国際的な研究プロジェクトである「GISAID」や「Nextstrain」のデータや研究を大いに参考とした。]

全ゲノム解析の結果、オミクロン株の変異箇所は約30箇所あることが分かっている。アルファ株、デルタ株の変異箇所が約10箇所ほどであるから普通に考えれば当該のオミクロン株は最も古い変異種の一つである筈である。論理的に見てもそうだが、遺伝学的にもそうらしく2020年3月くらいまでその起源を遡ることができるらしい。

それにしても、これほどの感染力のあるウイルスが全世界の関心が新型コロナウイルスに集まる中、どうやって今まで誰にも気付かれずにこれほどの変異を積み重ねることができたのか不思議でならない。

これに関しては、既にいくつか興味深い説が提唱されている。一つはゲノム解析を全くしなかった地域で変異を蓄積させたウイルスが一気にあふれ出た、というものだ。しかしウイルスがこれほどになるまで限定的な場所にとどまっていられるものなのかという疑問はやはり残る。

もう一つの説はややアクロバティックである。人間に感染した新型コロナウイルスが一旦動物に感染し、その動物間において変異を蓄積させ、それが再び人間に感染したとするものだ。つまり「人獣人」という感染経路で今に至るという理屈である。この説にはウイルスが「人獣」の壁を二度越えなければならないという難しさがある。

最後は、ヒトの身体の中でウイルスが変異を重ねたとする説である。例えば免疫不全症の人がコロナウイルスに感染したとする。その時ウイルスはヒト免疫の完全な攻撃を受けることなく比較的弱い攻撃に長時間曝されることとなる。その間にウイルスはヒトの免疫系を学習しその耐性を獲得するに至るという理屈である。全くの私見ではあるが、これが一番理に適っているように思えるのだが、どうか。

いずれにしろ我々が恐れるべきは、世界の話題の中心が新型コロナウイルスであり続けたこの2年間、誰にも知られずに変異を遂げたオミクロン株の超ステルス性能である。それこそSF映画ではないが、攻撃の波ごとに特化した性能が変わって行くこのウイルスは、まるで未来から送られてくるマシーンのようだ。まだまだ終息の時は遠そうである。

戦いも2年を超えれば、持久戦と言っていい。これを消耗戦にまでしてはならない。そのためにも今後(実のところ今もう既に、であるが)政治判断が後手に回ることは許されないのである。言うまでもなく我々も学ぶことを忘れてはならないし、慎むことをやめてはならない。そして何より戦うことをあきらめてはならないのである。

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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