日々変わっていく世界情勢や日本周辺の軍事的な環境などについて、2008年以来年1回、陸上自衛隊幹部候補生への講義を続けている軍事アナリストの小川和久さん。今回のメルマガ『NEWSを疑え!』では、2月8日に迫った講義で予定している内容を紹介。「精神論で構わない」との意見があっても、常に最先端の高度な内容を伝え続けるその意図を綴っています。
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こんな講義を幹部候補生にします
8日に陸上自衛隊幹部候補生学校の講義を控えて、パワーポイントの再構成に追われています。今回は、関心の高い順に「台湾有事のリアリティ」、「中国の軍事力の実態」、「中国と北朝鮮のミサイルの動向」、そして「ウクライナ情勢の読み方」の4点セットを、質疑応答を含めて2時間にわたって話す予定です。
特に北朝鮮のミサイルとウクライナ情勢は時々刻々と動きが出て、それに振り回されないように、しかもポイントを外さないように話さなければなりません。最後までスライドの再構成はついてきます。
この講義は2008年からの14回(2021年はコロナで中止)と、その前の1回の都合15回にわたり続けているもので、内容的には自衛隊の高級幹部向けとまったく同じものです。
幹部候補生はこれから自衛隊の幹部(将校)になっていく若手ですから、「そんな高度な内容は必要ない。精神論で構わない」と言い切る人もいますが、私の考えは違います。私の講義を聴き、質問に立ち、質疑応答を耳にし、考えた幹部候補生の中から、自発的に勉強する芽が生まれることを期待しているのです。
また、一緒に講義を受けている学校長らにも聞いてもらおうという狙いがあります。そして、別の講義の機会に幹部候補生たちと私の講義について論じ合ってもらいたいのです。
台湾有事にしろ、中国の軍事力の見方にしろ、私の講義には自衛官であっても知らない情報や分析が多分に含まれています。また、台湾への上陸侵攻の前提条件となる中国の海上輸送能力の算出法や台湾の海岸線における上陸適地などは、エリートコースである指揮幕僚課程(CGS)で初めて教わるもので、大部分の自衛官が知ることのないものです。
しかし、それを「耳学問」で知っているかどうかで、まだ初級幹部の立場でも情勢の見方は変わってきます。だから私はあえて取り上げるのです。
また、幹部候補生学校の学校長(陸将補)に聴いてもらいたいという狙いもあります。学校長は、そのあと陸上自衛隊を実質的に動かす陸上幕僚監部の防衛部長などに転じる人も多く、それからも師団長、方面総監、陸上総隊司令官などの要職を歴任します。私が話すことの多くは知識として備えているはずですが、私の講義をきっかけに薄れている記憶を掻き立ててもらい、日本の防衛政策の向上に役立てて欲しいと願っているからです。
今回はコロナの蔓延でZoomを使った講義となりますが、早く対面で質問に答えられる日が戻って欲しいと願っています。(小川和久)
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