日本メディアが読み取れぬ、戦争中に開幕した中国「全人代」の注目点

 

中国が「人権の重視」などといえば、ほとんどの西側社会の人々は、「実体のともなわない話」と切り捨ててしまう。だが、中国が人権を重視しているのは紛れもない事実だ。それが西側から見えにくいのは、一口に「人権」といったところで、その中身が大きく違っているためだ。これについては先にも述べた。

そして、これに加えてもう一つ重要なことは、中国の人権は「過渡期」にあって、中国の取り組みは現在が完成形ではないという点だ。ここを誤解してはならないのだ。

前述した学習会のなかでも習近平国家主席は、「われわれは百年の奮闘目標を成し遂げたことにより小康社会を全面的に実現し、歴史的な課題であった絶対貧困を解決した。これにより我が国は人権事業を堅実に発展させるための物質的な基礎を打ち立てた」と述べている。つまり「衣食足りて」という物質の前提がやっとできたといっているのだ。

中国の変化は突然目の前に現れるという印象を多くの日本人がもっているだろう。コピー天国だった過去がほんの数年で改善されてしまっていたり、あれほどひどかった環境汚染もあっというまになくなってしまったり。なかでも一番の経験は、中国の経済発展と科学技術の目覚ましい進歩だ。それ以前の中国の評価とは真逆の現実を見せつけられる。

こうしたイメージと現実とのギャップは、当然のこと原因がある。われわれが勝手に相手の変化に目を閉じていたこともあれば、その前の段階での取り組みを見てこなかったためでもある。その理屈でいえば「人権」についてもまた同じようなことが起きるのかもしれない。少なくともその可能性を否定することは隣国への理解を妨げることになるのだろう。

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image by:365 Focus Photography/Shutterstock.com

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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