国民もプーチンから離れはじめる
ロシア国民も分裂しています。
ロシアを見ると、
- テレビ世代、つまり年配世代はプーチン支持
- ネット世代、若者は反プーチン
という構図があります。そして、40代、50代は、テレビとネット両方から影響を受けている。ロシアのテレビ世代は、
- ルガンスク、ドネツクのロシア系住民は、ジェノサイドされていて、救わなければならない
- だから、ルガンスク、ドネツクの独立を認める
- ルガンスク、ドネツクをウクライナ軍から守るために、ロシア軍が平和維持軍として駐留する
ここまでは、圧倒的に支持していました。庶民は、「国際法がどうの」とかあまり考えないものです。
しかし、流れが変わったのは、ロシア軍が、ウクライナの首都キエフ、第2の都市ハリコフをはじめ、全土を攻撃しはじめてから。テレビとネットの間を揺れる中年、あるいはテレビ世代も「いや~、キエフに侵攻するのは、やりすぎでしょ。意味不明すぎる」という感じになってきた。「ルガンスク、ドネツクを守るために、キエフを攻撃する」というロジックが、なかなか理解されていないのです。
それで、ロシアでは毎日反戦デモが盛り上がっています。逮捕されたり、失職するリスクをとって、反戦デモに参加する人たち。勇気があります。
そして、地獄の制裁の影響がこれからでてきます。クリミア併合後の制裁で、すでに全く成長していないロシア。今回の制裁で、ルーブルは大暴落し、ひどいインフレが国を襲うでしょう。そして、外国の大手企業が続々と撤退していることから、失業者もすごい勢いで増加することでしょう。
というわけで、鉄壁に思われたプーチンの基盤。
- シロビキ内の将校が反逆している
- 新興財閥の一部が反逆している
- 国民で「ルガンスク、ドネツクの独立承認まではOKだが、キエフ侵攻は意味がわからない」と考える人が多い
というわけで、プーチン政権は、もはや盤石とはいえないのです。
プーチンは、1年以内に失脚?
ブルームバーグ3月7日には、「プーチンは、もって12か月」という話がでています。
マルコ・パピック氏は、政治指導者がしようとしていることを評価する場合、その人物の願望を重視しない。むしろ「物理的制約」、望むものを手に入れようとする指導者の能力がどんな要因で制限されるかに着目する。
ヘッジファンドに投資するオルタナティブ資産運用会社クロックタワー・グループのチーフストラテジスト、パピック氏はポッドキャストで、ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻で物理的制約を無視しており、最終的に失脚につながる恐れがあると主張した。
『地政学的アルファ:将来予測のための投資フレームワーク』(原題)の著者パピック氏は、これまでの制裁がプーチン大統領の行動に影響を及ぼしたり、打倒したりするために十分と考えられるかとの質問に対し、「プーチン氏に私が与える時間は12カ月未満だ。政策担当者が物理的制約を無視する並外れて悪い決定を下せば、罰を受ける」と指摘した。
「12か月以内にプーチンが失脚する」
私もその可能性は、大いにあると思います。プーチンのせいですべてを失いつつある新興財閥軍団が、クーデタを画策してもおかしくない状況になってきました。
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2022年3月8日号より一部抜粋)
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