韓国大物議員「ミスター苦言」が語る、文在寅の後継者が落選した“真の理由”

kp20220315
 

3月9日に行われた韓国大統領選で、野党候補の尹錫悦(ユン・ソンヨル)氏に僅差で破れた与党「民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補。なぜ文在寅大統領の後継者は落選の憂き目に遭うこととなってしまったのでしょうか。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、自党に対する辛辣な意見をいとわないベテラン議員による「敗因分析」を紹介。その与党にとって耳の痛い「正論」を堂々と語る姿勢を高く評価しています。

ミスター苦言・李相珉

民主党に1958年生まれ(64歳)の当選5回李相珉という議員がいる。自分の党に対しても辛口の言舌を吐くことで有名で「ミスター苦言」などと呼ばれている。車椅子を使う障害者でもある。大統領選挙期間にも党内の過度な「文在寅・李在明聖域化」を批判してメール爆弾に苦しんだりもした。

大統領選挙から2日後、民主党の敗北について、「ネーロナンブル」「偽善」「傲慢?独善」「徒党意識」などの修飾語を使い、「前代未聞の現職大統領を糾弾し、政権を直ちに明け渡すことになったことに対する切実な反省がなければならない」と語った。特に尹錫悦(ユン・ソンヨル)次期大統領と「国民の力」は「現在の勝利」に、民主党は「2年前の総選挙勝利」に埋没してはならないと言う。

尹次期大統領は民主化以降、最小票差(0.73%ポイント・24万7,077票)の「辛勝」で大統領府と行政府の権力を握ることになった。しかし172議席という強大な議会権力を持つ民主党が存在するわけだから、自分の立場を直視するようなガバナンスを行うしかないだろうと語る。朝鮮日報の記事を土台に、第20代の韓国大統領選の結果の総括をご紹介したい。

――民主党の敗北の最大の理由は何か

「民主党に対しては誰でも、ネーロナンブル(自分がやればロマンス、他人がやれば不倫という原義で、自分さえよければいいという破廉恥な態度)、偽善、傲慢、独善、盲従、徒党意識などがすぐに思い浮かぶ。パク・クネという当時の現職大統領を弾劾で追い出し、文在寅という人を立てたが、民主党はどのような行動をしたのか。我を張り、無理強いして、相手にはがまんしないと言ったり押し付けたりした。それでもだめだと最後は『李明博・朴槿恵の時よりはましではないか』と言っていた。国民は『民主党さんよ、あなたたちは違うだろう』という期待があったのに、それを満たしてあげられなかったばかりか完全に逆を行くようなことばかりしていたから失望感が大きいのは当然だ」

――選挙過程で最も残念な場面があるとしたら

「ネガティブ攻勢だ。なぜネガティブではなく人間的礼儀をもって紳士的に、政策アジェンダをより面白く解けなかったのかということだ。相手候補をゾンビや悪魔でもあるかのように追い詰めて、強引な主張をして食おうとした。寛容・配慮・許し・連帯・共存といった価値は見られなくなった。原則を最低限でも守った上での敗北だったらもっと良かったのに」

――最悪のネガティブキャンペーンは何だったのか

「(尹次期大統領の妻の)金ゴンヒ氏に対する攻撃は非常に卑劣で汚かった。キムさんの私生活関連のうわさを公の場で何気なく騒いだり、いくら表現の自由だとしても、いわゆる『ジュリー壁画(金ゴンヒ氏のことを飲み屋のママみたいなコンセプトで町の壁にでかでかと絵に描いた。飲み屋のママを愚弄するわけではなくて金ゴンヒ氏のことをありもしないまったくデタラメに表現した悪意ある壁画。これが問題)』に対する批判的認識もなかった。与党のある関係者は、『尹次期大統領がアッパーカットセレモニーをした時、お腹が出てワイシャツが出てる』と言って容貌を非難した。出身・容姿・背景で差別・嫌悪してはならないというのは、民主党の基本的な価値・志向点であり、国民が自負心を感じる部分だ。そのようなわが党(民主党)の伝統はもはやなくなったようだ。本当に残念だった」

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