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かつての米国と同じ。ロシア人が自分たちを「正義」と疑わない理由

ウクライナへの軍事侵攻を開始して以来、ロシアでは報道が規制され、マスメディアからだけ情報を得ている人たちはロシアが「正義」の戦いをしていると疑っていないという話が伝わってきます。今回のメルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』では、著者で精神科医の和田秀樹さんが「正義は誰が決めるものなのか」を考察。“コロナ自粛”という「正義」が、ウクライナの人たちを心配する「正義」に置き換わったように、マスコミが「正義」を決める側面があるなかで、ロシアへの制裁の是非について新たな「正義」が出てきたと注目しています。

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正義は誰が決めるものか?

今回の戦争で、ロシアの人たちは正しいことをしていると思うから残酷になれる。これは、自分たちを「世界の警察」と思っていたころのアメリカだってそうだろう。自分たちが「正義」で「正しい」と思っているから、武力で政権をひっくり返し、一般市民が巻き添えになっても平気でいられた。

ある時期から、「正義」の定義が変わってなるべく市民を巻き添えにしないようにしようという戦術に変わった。強者の余裕と言えるが、実際には、武装市民のテロやゲリラに勝てなくなって、自軍の死者が増えるので、「世界の警察」はやめるという話になる。「世界の警察」という考え方が思い上がりだと反省したのでなく、あまり得をしないからやめただけの話だ。

だから自分たちのやってきた「世界の警察」に反省することもないし、力で自分のイデオロギーを押し付けるのが正義と思っている(今の力は軍事力でなく経済制裁だが)から、ロシアも自分たちが力を得た(軍事力はもともと持っているが、経済制裁に耐えられる国力)ら、自分のイデオロギーを力でよその国に押し付けていいと思っているのだろう。そして「正義の戦争」だからいくらでも残酷になれる。

ただ、この「正義」というものには絶対はない。イスラム教では神の決めたことは絶対だが、人間の決めたものなど基本的にコロコロ変わるものだし、信頼できないという考えだという。

科学的真理だって、いわゆる「正義」だって、人間が決めたものは、いつかは変わる。「正義」とか「人を助けたい気持ち」のような良心だって、コロコロ変わる。ウクライナの戦争が起こる前は、コロナ自粛が正義だったし、自粛することが「人を助けたい気持ち」だった。

今もそうだが、それほどうるさくいわれなくなり、「正義」が押し付けられなくなったのは、ウクライナの人たちをなんとかしてあげたい、ロシアをこらしめることが正義となったからだろう。ただ、そんなものだって、1回地震がくるとマスコミはそれに集中する。

3.11の地震が今起こっていたら、少なくとも欧米ではベタ記事の扱いになっていただろう。同情とか良心というのは、自分たちが可哀想だと思えるものにいく。まともに報じられなければ、同情もしてもらえないし、助けてももらえない。

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正義をマスコミが決めるのは日本に限ったことではない。ただ、今回、これまでと違う「正義」が出てきたことには注目している。

経済制裁をしても、困るのは一般市民であって、プーチンにはそれほどこたえない。だから、あまり締め付けるのはやめようという「正義」だ。これは、その通りである。北朝鮮だって、制裁で飢えるのは一般市民であり、子どもたちである。

ただ、ロシアの場合、資源大国であり、食糧大国なので、市民はそれほど飢えないし、凍えないだろう。それでも可哀想だからやめようというのは、むしろ制裁をしないエクスキュースだろう。本格的な制裁をすると、原油や天然ガスや小麦が入らなくなるので、「良心」という建前を言っているだけではないか。

以前、ソ連がアフガン侵攻をした際に、アメリカが小麦の輸出を止めようとした。しかし、それは人道的でないという理由で議会が通らなかった。実際は、アメリカの農民が売り先がなくなり、小麦価格の暴落をおそれて激しい反対をしたからだった。

「正義」とか「良心」というのは、そんなものだ。(メルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』2022年3月26日号より一部抜粋、全文はご登録の上お楽しみください)

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image by:Tverdokhlib/Shutterstock.com

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高齢者を専門とする精神科医、学派にとらわれない精神療法家、アンチエイジングドクター、そして映画監督として、なるべく幅広い考えをもちたい、良い加減のいい加減男。

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