武田教授が解説。日本がCO2を出しても温暖化にはつながらない「根拠」

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大規模な気候変動をもたらす地球温暖化を防ぐため、世界規模で叫ばれているCO2の削減。しかし日本に限って言えば、そんな取り組みに力を入れる必要はないようです。今回のメルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』では中部大学教授の武田邦彦さんが、日本がどれだけCO2を排出しても温暖化につながらない根拠を科学的に解説。むしろ我が国が化石燃料を消費せずにCO2を削減することは人類全体にとってマイナスだとし、その理由を説いています。

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温帯の島国である「日本」の環境は温暖化に影響するのか

まず、断っておくけれど、この論考では「地球が温暖化するかどうか」については論じない。著者自身は温暖化より寒冷化が危険と考えていて、世界の多くの学者も同様と思っているが、なにしろ政府やメディアが「温暖化が危険」と言っているので、ここでは「温暖化を防がなければならない」ということを前提として整理をしたい。

さらに、この整理で注目したいのは、「地球温暖化と日本」という地域限定型の問題である。地球温暖化というのは「環境問題」であり、「環境」とは「地域性のあるもの」である。ロシアは気温が低いので温暖化によって被害はほとんどないと言われているし、大陸性の気候で亜熱帯の一部を含む中国などは、温暖化すると酷いことになるだろう。

一方、人類にとって「温暖化ガスを出してはいけない国」と、「出した方が良い国」がある。つまり、「温暖化の被害があるかどうか」と、「温暖化ガスの影響の違い」の二つがあり、それを何も整理せずに、ヨーロッパ諸国が温暖化に神経質だからと言って、ただ「温暖化ガスを出すな!」と言っているのはあまりに非科学的で、幼稚な考え方であると言えよう。

繰り返すが、ここではあくまで「日本人と温暖化」という視点で整理をしている。

日本は世界でほぼ唯一の「温帯の島国」であり、かつエネルギーの消費量も大きく、人口も1億人を超える大国である。だから普通に考えれば、エネルギーの消費量を減らしたり、温暖化ガスの排出を減らすために石炭から天然ガスに変えた方が良いように思うが、実は日本だけは世界で温暖化対策が「逆」なのである。

日本は列島で四方が海に囲まれている。そして、常に偏西風が吹いていて、列島の中央には3,000メートル級の山が連なっている。温帯なので春夏秋冬の季節がハッキリしていて、春は中国大陸から黄砂が飛んでくるし、それが終わると梅雨前線が停滞して大量の雨を降らし、冬は日本海からの湿った空気が山脈にぶつかって雪を降らす。実に変化にとんだ環境である。

温暖化ガス、つまり二酸化炭素(CO2)は炭素を燃やしてエネルギーを得る時に出るので、生物の体の中の炭素を燃やす時には呼吸、家庭ではガス、お風呂、家電製品などを使った時の電気(温暖化ガスの出る場所は発電所だが)、自動車など多種多様な活動でCO2が出る。原子力や太陽光などを除くと、私たちの使っているエネルギーはほとんど炭素によっていると言えるし、原子力でも建設に使うセメントと鉄鋼、太陽光ではシリコンと設備、水力発電所の場合は土木工事とコンクリートというように、一見して炭素を使わないエネルギーでもほぼ同等の化石燃料を使っている。

電力のようなエネルギー産業ばかりではなく、一般の産業で大口でCO2が出るのは、製鉄所、セメント工業などであり、広範囲でCO2を出している。節約するとか効率を上げるということはできるけれど、産業の発展、GDPの増加を防ぐためにCO2を減らすということを一つの国で実施することは難しいが、世界的な地理的条件で実現することができる。

日本列島からCO2を出すと、諸外国とは違い、偏西風に乗って太平洋に出る。CO2は分子量が44と大きく、空気の29より重たいので、発生したばかりのCO2は比較的低空に存在する。だから海面と接したり、海面の波で吸収されたりするし、さらに一雨降れば雨粒は小さくて表面積が大きいのでCO2を吸収しやすく、直ちに海水に溶ける。

つまり、逆の言い方をすれば「日本ではCO2を出しても温暖化の原因にならない」ということで、国の東方が大陸であるヨーロッパとはまったく環境が違うのである。さらに言えば、「日本人は何をしてもCO2を増やすことはできない」と言っても良く、寒冷化になったらCO2を増やして防ぐことができないとも言える。

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