プーチン露ウクライナ侵略の裏で中国・習近平が煽る「別の危機」

 

2つ目は、ロシア内で交渉を担当しているグループ(背広組)と軍(制服組)との間の意思疎通および信頼の欠如が考えられます。

ウクライナとの和平協議が開始されて以降、ロシア軍側からはロシア側の交渉担当団の方針と姿勢に異を唱えており、和平プロセスそのものへの反感も存在するようです。

特に現場の状況も知らずに、勝手にいろいろと決めるのは我慢ならないという意見も多く、交渉団が決めてきたと思われる内容には、プーチン大統領からの直接の指示がないと、従わないとの姿勢を貫いています。

もし、今回のマリウポリの人道回廊の再開が、この交渉団による合意なのだとしたら、軍がそれを無視して、自らが受けている【マリウポリの完全なる破壊】と淡々と遂行しているというようにも考えられます。

その真偽は残念ながら分かりませんが、政府側そして軍の側双方から聞く情報に鑑みると、強ち(あながち)間違っているようにも思えません。

3つ目は【人道回廊の再開に対する合意はあったが、その合意の基本となる“避難時の武器不携帯”というルールをアゾフ連隊が無視した】ということも考えられます。

真偽のほどは分かりませんが、アゾフ連隊側がロシア側に要求した内容に、【武器の携行を許可してほしい】というものがあったそうで、ロシア側からの回答を待つことなく、武器を携行し、“一般市民”に寄り添う形で武装したアゾフ連隊が出てきたことに、合意違反としてロシア側が砲撃を加えたという説もあります。

これを受けて、別の疑念が生まれてくるのですが、今回の人道回廊の再開交渉において、ウクライナ側の当事者は誰だったのでしょうか?

もしこの製鉄所で立てこもっているアゾフ連隊が当事者なのだとしたら、武器を携行しての人道回廊の使用に踏み切り、ロシア軍からの砲撃を誘発した責任は、アゾフ連隊側にあると思われますが、そもそもアゾフ連隊に交渉の当事者たる資格が与えられていたのかは疑問です。

または、交渉・協議の当事者はウクライナ政府だったが、ロシア側と“合意”した人道回廊の設置についての基本ルールを、ウクライナ政府がアゾフ連隊に対して説得できなかったのではないかとの疑念が生まれます。

ゼレンスキー大統領が繰り返し徹底抗戦を訴えつつ、交渉の可能性を匂わせているのは、戦略的には評価できるのですが、マリウポリの現状に対して権限を持っているのは、ゼレンスキー大統領なのか、それともアゾフ連隊なのか。

少し見えづらくなってきたのは私だけでしょうか?

そして4つ目は【そもそも人道回廊の再開についての合意が成立していない】のではないかとの疑いです。

今回の人道回廊の再開についての発表は、ロシア軍からの砲撃に至るまで、ウクライナサイドからの一方的なものであり、ロシア側からは一切の言及がありませんでした。

これはどういうことでしょうか?

もし合意が成立していたのであれば、ロシア側としても発表することで、少しは歩み寄りの姿勢を示したとアピールできたかもしれません。

しかし、私が見逃しているだけかもしれませんが、そのような発表がロシア側からなされた形跡がありません。

もしウクライナ側からの一方的な発表、もしくはフライングだったのだとしたら、全滅を命令されているらしいロシア軍の側からすれば、変わらず砲撃を加えるのは作戦上当然だったと言えるかもしれません。

とはいえ、もともとこんな全滅を意図するような攻撃を仕掛けていること自体が間違いですが。

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