プーチン露ウクライナ侵略の裏で中国・習近平が煽る「別の危機」

 

では、これまで4回開催された和平協議の今はどうなっているのでしょうか?

水面下では(オンライン上で)情報の交換やコンタクトは保たれているようですが、大きな進展は見られません。

また仲介の任を自任しているトルコによる仲裁・調停も不発に終わっています。

いろいろな状況や情報を総合的に見てみると、和平協議は完全に行き詰っていると言えます。

ロシア側は、最近、プーチン大統領が「交渉や和平協議に応じるには、まだ機が熟していない」と述べているように、まだ話し合いのテーブルに就くつもりはないようです。

では“いつになったら機が熟すのか”と聞きたくなりますが、そのための最低条件が「ドンバス地方の完全掌握」と「マリウポリの陥落」であるようです。そのうえで、2014年に侵攻したクリミア半島の併合を認めさせることと、ウクライナの完全非武装と中立化などについて要求を再提示するのではないかと予測されます。

ウクライナ側としては、ゼレンスキー大統領が最近繰り返しているように、マリウポリの陥落は、すなわち徹底抗戦を意味し、交渉や和平協議の終わりを意味することになりますので、ここに交渉が成立する基盤が存在しえないことに気づきます。

先ほど触れたマリウポリの人道回廊の再開については、仮に合意があったとしても、その信憑性には疑問がありましたが、ロシア軍関係者の話によると、「人道回廊を設置しても、一般市民に紛れ込んで戦闘員が混じっていることも大いに考えられる。それは絶対に許容することはない」とのことでしたので、やはり人道回廊の再開が実現することはかなり困難だったと言わざるを得ません(もしアゾフ連隊が武器の非携行に同意していたら別だったかもしれませんが)。

またウクライナ政府は、ゼレンスキー大統領曰く、「ウクライナの現状を変更する内容は受け入れ不可能」と明言していることもあり、ロシア側がアプローチするドンバス地方のロシアへの併合・編入やクリミア半島のロシアへの編入といったものは受け入れられず、ここでも交渉が成り立たない要素が見えます。

私個人的にはメディアが挙って取り上げる5月9日という“deadline”をあまり重要視していませんが、ロシアが総攻撃をかけ、少なくもドンバス地方からマリウポリに至るロシア軍にとっての海上アクセスを確保するための勢力圏回廊の獲得は狙ってくる期日ではないかと思います。

それが叶ったら、一応、ロシア的には話し合いのテーブルに就くベースができたといえるのでしょうが、そこで止まるか否かは、誰にもわかりませんし、その後に欧米諸国からの反応しだいなのかもしれません。

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