プーチン露ウクライナ侵略の裏で中国・習近平が煽る「別の危機」

 

世界の分断が明確に

4月20日にワシントンDCでG20財務大臣・中央銀行総裁会議が開催されました。ウクライナ紛争が進む中、ロシアのシルアノフ財務大臣はオンラインで参加し「ロシアに対する制裁が、すでに生じていたインフレ圧力を強めているだけでなく、経済の新しいリスクを作り出した」と非難しました。

その際、アメリカのイエレン財務長官とパウエルFRB議長、カナダのフリーランド副首相兼財務大臣、そして英国のスナク財務大臣が退席をし、ロシアに対する非難の姿勢を見せるという、非常に稀な事態が起こりました。

しかし、日本やフランス、イタリア、ドイツなどのG7諸国、そして中印、ブラジルをはじめとする17か国と地域(EU)は議場に留まり、ロシアに対する各国の態度に温度差があることがここでも鮮明になりました。

G20各国(ロシアを除く)がロシアによるウクライナへの武力侵攻を非難するものの、欧米諸国が課す対ロ制裁には賛同しておらず、今回のG20の場でも制裁反対の声が上がったようです。

コロナウイルスのパンデミックを受けて世界の分断が鮮明になっていたところに、ウクライナ紛争が起こり、各国での人道危機や経済への悪影響が広がる中、G20が結束できない状況になっていることは、もはやG20の枠組みも、国連同様に機能不全に陥っているだけでなく、先進国vs.途上国の2分論を印象付ける結果になりました。

ブラジルやアルゼンチン、南アの代表が示した懸念では、「対ロ制裁は一方的な理屈に基づいて行われ、世界経済を政治問題化し、武器化してしまった。しかし、国際社会は忘れてはならないことは、対ロ制裁に賛同している国は、世界の人口の1/3を占めるにすぎず、それらは欧米諸国とそれらに盲従する国々に限られていることだ」と痛烈な皮肉が述べられました。

決してロシアの行動を肯定するものではありませんが、これもまた世界の現実であることを認識しておかないといけないでしょう。

ちなみに、いろいろな評価があるかと思いますが、個人的には今回、米英加が行った退席という行為は、ロシアの蛮行を止めさせるには決して賢明な手段とは考えません。

代わりにしっかりと多国間の会議に参加させて、意見を述べさせることをお勧めします。内容は耳を覆いたくなるようなものでも、納得する必要も同意する必要もなく、ロシアからの発言内容をつぶさに記録して、後日、行動や事実との整合性のなさを責めるほうがよほど効果的な気がしますが…。その点では、今回、日本の鈴木財務大臣と黒田日銀総裁が退席せずに会場に留まったという判断は称賛できると思います。

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