さて、中国ですが、ロシア・ウクライナ問題からは距離を置きつつ、アジア太平洋地域における自国の勢力の拡大を図っています。
これは世界の目がウクライナでの悲劇に向いている裏で進められている別の危機だと言えるでしょう。
台湾に対する懸念については先ほどお話ししていますので繰り返しませんが、そのハレーションはしっかりと南シナ海にも及んでおり、ウクライナ情勢でも態度を明確化しないASEAN諸国を中国サイドに吸収しようと、南シナ海への展開を強化してプレッシャーをかけているようです。
今回、G20の議長国でもあるインドネシアはもちろん、マレーシア、フィリピンなどにも食指を伸ばし、同時に世界が“見捨てた”ミャンマーの取り込みも進めています。
そして今週、その最大の企みが表に出たのが、スリランカのデフォルト危機です。IMFの分析によると、すでに自助努力で何とかできるレベルではないほど、国際収支は深刻な悪化を見せており、対中債務不履行に加えて、ドル建ての債務不履行が重なり、スリランカ全土で経済危機、日に10時間以上にわたる停電が起きており、すでに政府も打つ手がないと諦めモードになっています。
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このような危機を救う手立ては、【IMFからの緊急支援】が考えられますが、IMF曰く、「持続可能な債務への十分な保証が必要だが、その可能性が見通せない」と緊急融資の実施には慎重になっているようです。インドが後ろ盾としてスリランカへの緊急融資の必要性をIMFに訴えかけているようですが、このメルマガを書いている時点では、IMFはまだ首を縦には振ってくれないようです。
このスリランカ経済危機ですが、もちろんそのトリガーを弾いているのは、一帯一路政策で港湾をはじめ、さまざまなインフラ案件への支援を行ってきた中国です。
その中国は、スリランカ政府からの債務不履行に関する協議依頼をこれまでのところ突っぱねており、確実にインドと目と鼻の先に位置するスリランカを奪いに来て、南アジア地域での勢力の拡大を進めていると思われます。
確実に中国とインドとの対立軸がまた一つ増えることになりますが、ウクライナおよびその周辺での緊張が高まる背後で、また大きな争いの種が生まれそうな予感がしております。
ウクライナ紛争はまだまだ解決までしばらくかかると考えていますが、ウクライナ紛争が長引くほど、日本を取り巻く北東アジア情勢およびアジア太平洋地域における中国のプッシュが強まってくると思われます。
そのような時、どのように、迅速に対応して、不必要な危機を招かずに済むか。日本としてはしっかりと策を練り、いつでも発動できるようにしておく必要があるでしょう。特に独自の軍事オプションがあまり考えられない特殊な事情がある中で、取り得るチョイスはあまりないかもしれません。
世界の分断は、恐らくもう引き返すことが出来ないレベルまで来てしまった気がします。ウクライナ紛争はそれを露わにし、多くの市民を犠牲にした上で、世界の秩序とパワーバランスを大きく変えようとしているように思います。
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