ウクライナ侵攻に対する中国人教授の不敵な発言は「良いリハーサル」

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ロシアによるウクライナ侵略が現実のものとなってしまった今、もはやつ勃発しても不思議ではないとまで言われる台湾有事。世界はこの問題をどのように捉え論じているのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、イギリスの有力誌『エコノミスト』に掲載された台湾有事に関する記事を翻訳し紹介。元米軍司令官の冷静な分析や中国人大学教授の不敵な発言等を引きながら、日本における当問題の真剣な議論の必要性を訴えています。

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ウクライナとの比較:台湾有事

実際に起こるはずがないと思われていたウクライナ侵攻をプーチンがしたことにより、中国の台湾進攻も現実味をもって論じられることになりました。

この件について今週の英誌『エコノミスト』が論じていますので紹介しましょう。

台湾はアメリカを頼れるか?

 

アジアにはNATOに相当するものはない。アメリカは台湾を自衛するための手段を提供すると約束しているが、台湾をめぐって中国と戦争をするかどうかは明言しないままだ。

 

アメリカは、台湾のために戦い、(ウクライナと違って)核のエスカレーションの危険を冒す覚悟があることをほのめかしている。

 

しかし、これはジョー・バイデン大統領が言うように、NATOを防衛するという「神聖な義務」には程遠いものである。

 

このような「戦略的曖昧さ」は、中国による攻撃と台湾の独立宣言の両方を防ぐためのものである。しかし、パワーバランスが変化する中で、このような不確実性は、中国の攻撃を抑止できない危険性がある。

 

NATOの30の同盟国が相互防衛を約束するのとは対照的にアジアのアメリカ同盟国には相互義務はない。アメリカがオーストラリア、日本、韓国などとは個別に協定を結んでいるだけである。

 

しかもアジアのアメリカ同盟国の多くは台湾海峡を挟んだ現状を維持することに関心を示している。

解説

アメリカの台湾防衛の約束はNATOほど強固ではない。しかも周辺各国も現状維持に腐心しているだけであり、台湾防衛についての意見交換や調整もなくバラバラである、との意見です。

そんな中で日本の立場を特に取り上げて論じています。

日本の役割は、その強力な海軍力、近接性、沖縄やその他の領土にある米軍を考えると、重要である。両国は正式な関係はないが、互いに主要な貿易相手国の一つである。台湾の航路は、日本の貿易、特にエネルギーや食料の輸入に欠かせない。人と人とのつながりも強い。

 

日本は平和主義を掲げているが、台湾をめぐる戦争には必ず巻き込まれるという認識が広まっている。台湾を助けるために、アメリカは日本にある基地に頼ることになるだろう。中国は、先制攻撃や介入に応じた攻撃を行うかもしれない。日本が支配する台湾周辺の尖閣諸島を奪取したり、日本の領海・領空を侵犯したりする可能性がある。

 

安倍晋三元首相は昨年12月、「台湾有事は日本の有事であり、したがって日米同盟の有事である」と総括している。「習近平国家主席は、このことを認識する上で、いかなる誤解もあってはならない」とも述べた。

 

2015年の憲法解釈の変更により、日本が攻撃されていなくても、「存立危機事態」と判断されれば、日本の自衛隊は戦闘に出動できるようになった。

 

日本がどのように支援できるかは不明だ。日本の戦争ゲーム(議論)は、しばしば参加者が法的拘束を受ける形で終了する。

解説

憲法解釈の変更により、台湾有事の際に自衛隊が出動できるようになったにもかかわらず、その議論が「法的にできない」という形で終わる事を揶揄しています。

アジアで最も能動的に行動せざるえないのは日本である可能性が高いにも関わらずです。

いずれにしても日本が中国の台湾進攻時における重要な役割を果たすことはエコノミスト誌の目からみても自明のようです。

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