プーチンと習近平を引き離せ。日本が生き残りを賭けて展開すべき中ロ外交

rizi20220426
 

3月7日、アメリカやイギリスとともに日本を非友好国に指定したプーチン大統領。しかし海を挟んで国境を接するロシアと我が国との間には、漁業交渉をはじめとする「話し合いのテーブル」が必要な案件が数多く存在しています。日本政府はこの先、どのような対ロ外交を展開してゆくべきなのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、今後予想される懸念を挙げつつ、それぞれについて毅然と動いてゆくしかないと言明。さらに「中国とロシアをどう引き離すか」がひとつの鍵になるとして、その具体策を提案しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年4月26日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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岸田政権のロシア外交をどう考えるか?

鈴木俊一財務大臣は4月20日に行われた、G20の財務大臣・中央銀行総裁会議の終了後に記者会見しました。そこで、会議の中でロシアの代表団による発言の際、「自分自身は退席しないで」、ロシアのウクライナ侵攻を「最も強い言葉で非難した」と明らかにしたのだそうです。

ちなみに、米英など西側諸国の一部は、ロシア側が発言をする場面では会議から退席することで抗議の姿勢を示していたわけで、鈴木大臣は表面的には「ロシアとの喧嘩をスルー」した格好になりました。

また、日本維新の会の鈴木宗男参院議員はこれと前後して4月17日に、札幌市で講演し、ロシアが北方領土問題を含む平和条約締結交渉の中断などを表明したことについて、「現状では」という断りが付いていると指摘し、「まだ(日本に)配慮してくれている面がある」との認識を示したそうです。

その上で「(ロシア側のメッセージを)裏表を見ずに斜め読みしていると、どこかでツケが回ってくる」という不思議なコメントを述べています。これに対しては、宗男議員=親ロシアという「常識的な」見方から、同議員は「制裁を見直せ」と言っているのだという解説がされています。

ちなみに、その鈴木宗男議員の発言ですが、ロシアが「平和条約交渉を中断」と言っている中に「現状では」という「但し書き」があることに注目して、「これは完全に日本との関係を切るのではない」というメッセージが入っているという解釈をしているわけです。

つまり「だから制裁をやめろ」というのではなく、「制裁をして、ロシアを怒らせたのだから北方領土を諦める」というのは短絡であり、ロシアに負けないように、もっと息の長い交渉をすべきだとしているわけです。また、今はその時期ではないということも、宗男氏にしても理解しているのだと思います。

一方の鈴木俊一大臣ですが、実は鈴木善幸総理の息子さんです。善幸氏といえば、1977年に「200カイリ」問題で大トラブルとなった、ロシア(当時はソ連)との漁業交渉を非常に粘り強く担当したことで有名です。その粘りが、最終的に善幸氏を総理にまで押し上げたと言ってもいいでしょう。

あまりに、ソ連との交渉で粘りを見せていたので、アメリカは、善幸氏をそれこそ宗男氏のように「ソ連寄りのフィクサー」と誤解していたという説もあるくらいです。

さて、最初の鈴木大臣の言動ですが、実は、前後した宗男氏の発言と「連動はしていないかもしれないが、動機は同じ」だということが指摘できます。

というのは、この4月の17日から20日というタイミングでは、オンラインで、日本の水産庁とロシアの「サケマス漁の交渉」が続いていたからです。そして、意外なことに、この交渉は「成立」したのでした。

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