自己保身の極致。韓国の文在寅大統領が5年間も逆に回した民主主義の時計

2022.05.03
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2017年の就任から5年、今月9日24時をもって任期を終える韓国の文在寅大統領。この間、日韓関係はかつてないほどの冷え込みを見せましたが、韓国ではその政治手腕や為政能力はどのような評価を得ているのでしょうか。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、地元紙に掲載された文大統領を総括したコラムの内容を、翻訳する形で紹介しています。

裸の王様遊び

文在寅の悪口ばかりで恐縮だ。5月9日夜の12時に役割終了するが、これまでの5年間を総括しておく必要はあろう。東亜日報のコラムがよくまとまっているので(筆者のことばで)ご紹介したい。

数日前に文在寅が退任インタビューを受けたが、その内容は自画自賛と自己合理化で埋め尽くされていた。これが、自分を客観化させる能力に欠けている結果なのか、それとも実際には真実を知っていながらも気にせずに自分が正しかったと主張できる鉄面皮の産物なのか、あえて区分する必要はない。

「歴代政府の中で一番疎通が上手だった」「不動産価格の上昇幅が最も小さかった」などと文在寅はこの5年間を自画自賛しているけれど、現実はそれと全く反対の結果だったことは三尺童子(=幼な子のこと。韓国語の使い方)でさえも知っていることだ。

文在寅が最大の誇りとして掲げているのが、北との戦争危機を解消し対話局面に転換させたという論理だ。もちろん、2017年下半期の韓半島危機論が高まり、2018年の対話局面に急変したことは事実だ。

しかしその変化の動力は、米国の最高レベルの圧迫の結果、脱出口が必要になった金正恩の急旋回だった。金正恩は2018年新年のあいさつで「平昌冬季五輪参加」と「南北対話」を明確にした。誰が大統領だったとしても、その変化モードを逃さなかっただろうし、交渉局面に転換しただろう。

文在寅と民主党は尹錫悦(ユン・ソンヨル)次期大統領の安保関連発言について、「適切でない」「危険な発想」と非難する。しかし、国民が見るには本当に危険で不適切なのは、「金正恩の非核化意志」を金正恩に代わって保証してあげ、(北の)核・ミサイル高度化の時間だけを稼いであげたことだ。連絡事務所の爆破のような挑発や、中国の傍若無人覇権主義に一言も言えない屈従外交こそ危険でなくて何だろうか。

李起洪・東亜日報大記者は、文大統領が国内外の政策に取り入れて惨憺たる失敗に終わった左派的アプローチを、成功したかのように自画自賛し大統領当選者(尹錫悦)を批判する背景には、明確な目的意識が敷かれていると考える。

すなわち左派の核心と支持層に「私は最後までわれわれの陣営(左派陣営)を裏切らない。あなたたちも私を最後まで保護してほしい」というメッセージを送っているのだ。昔、支持層内の核心グループにそっぽを向かれた盧武鉉(ノ・ムヒョン)学習効果で、味方に背を向けられれば、退任後の安全保障は難しいという考えにとらわれ、味方を満足させる言動だけを選ぶやり方だ。

民主党の強硬派も「検捜完剥」で呼応している。現在の検捜完剥(コムスワンバク=検察の捜査権を完全剥奪する)は、捜査-起訴権分離に対する賛否を離れ、あらゆる面で常識と民主主義の原則の観点からして到底ありえない様相を呈している。

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