さて、このような状況の中で、日本は戦後、東西冷戦の西側陣営にあり安全保障も、また経済的な内容もすべてアメリカに依存していました。
近年になって、日本は完全に独立したような気になって、独自に中国やロシアに向かって言っていますが、しかし、北方領土に関しても全く独力で解決できませんし、中国に対する尖閣諸島問題も対処できない状態です。
相手が武力で出てきた場合は、その時にアメリカに頼るというような感じで、それは北朝鮮の拉致問題でも全く同じ状況なのです。
このような状況で、「都合の良いときだけアメリカの安全保障条約に頼る」という日本人の「ご都合主義」がまずは、もっとも大きなリスクであることがよくわかります。
このことは、現在のロシアのウクライナ侵攻であっても、経済をロシアに依存しながら、ロシアの侵攻に抗議するというようなことで、地下資源の問題などで苦労しているドイツやイタリア、あるいは経済全般を依存しているモルドバなどを見ていればよくわかるのではないでしょうか。
平時の「いいとこどり」は、間違いなく「緊急時の悪いところの集積」につながってしまうのです。
平時から日本人はそのようなことを意識して行動をするべきではないかと思うのです。
そのロシアは、すでに日本との間においてウクライナの問題で外交官を追放し、また63人の政治家やジャーナリストなどを入国禁止にしています。
要するに「戦争状態」であるということは明らかなのですが、日本人はいまだに「ロシアと戦争状態にある」ということを全く感じていないということになります。
「戦争」ということの定義の問題ですが、日本人の多くは、「第二次世界大戦のような敵国の上陸と武器の使用」と言うようなことを考えてしまっています。
しかし、そもそも「戦争」ということは「外交上の対立」と「交渉の不在」ということが挙げられるわけであり、その状態から、最終の解決手段として武器の使用、もっとあからさまな言い方をすれば、武力侵攻による敵方政府の降伏(滅亡)と、傀儡政権の樹立ということになります。
その意味では、現在「武力侵攻」がない状態で、すでに「外交上の対立」や「交渉の不在」ということが存在しているので、戦争状態にあり、いつ武力侵攻があってもおかしくない状態になるのです。
ちなみに、ウクライナ侵攻になって、左翼の一部のネット言論者の中やマスコミの一部から、安倍首相のプーチン大統領との交渉過程がおかしいのではないかというようなことを言っていました。
しかし、そもそも「戦争状態にしないために、外交上の対立を排除し、交渉を持つ」ということをするのは、当然に日本国の憲法の精神に基づくものであり、同時に、その内容が日本の国益につながるものです。
少なくとも現在、ロシアの軍事力と戦って、日本が勝てるというようなことはありません。
いや、ウクライナのように戦ったとしても、日本人の民間人に被害が出てしまう可能性があるので、それをいかに避けて、平和条約を締結するかということが重要になってくる状態です。
(メルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』2022年5月16日号より一部抜粋。続きはご登録の上、お楽しみください。初月無料です)
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