政府発足初期であるだけに、対日政策レビューに時間が必要だが、国内状況が容易ではない。
2019年7月1日、日韓関係が硬直化した直接的原因である強制徴用(決して強制ではないのだが…)に関与した日本企業の国内資産現金化手続きは早ければ今夏本格化する可能性がある。
日韓慰安婦合意をめぐる波紋も再燃する構えだ。
最近公開された外交部文書によれば2015年日韓慰安婦合意過程で外交部当局者が当時韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)代表だったユン・ミヒャンに合意内容をあらかじめ知らせたことが確認されたためだ。
尹錫悦政府の日韓関係改善の意志は非常に肯定的だが、2015年日韓慰安婦合意および破棄の教訓を絶対に忘れてはならない。
同じ事態が再燃すれば、国際的には韓国が国家間合意を数回破棄する国家という汚名が固まり、国内的にも反日デモの激化によって政権が動揺する恐れがあるためだ。
一部から聞こえる尹錫悦政府の「大枠の日韓関係正常化合意→日韓首脳会談→年内懸案一括解決」シナリオが憂慮される理由でもある。
これを防止するためには第一に、韓国外交の目標と対日政策基調の確立を日韓関係改善の出発点にしなければならない。
政争の最も手ごろな素材となってしまう「反日種族主義」を越えるのは、深みのある哲学と堅固な原則だ。
第二に、失敗と判定された文在寅政府の「被害者中心主義」を越える慰安婦・徴用工との疎通強化および支援方案を考えなければならない。
第三に、水面下・秘密交渉の伝統が強かった日韓交渉もできるだけ透明に切り替えなければならない。
国際秩序転換期に直面した日韓が過去史を越えてグローバル協力関係にまで発展しなければならないという共感の中で両国国民の心をつかむ交渉でなければならない。
このすべての過程で必要なのは「迅速性」ではなく「綿密さ」だろう。
尹錫悦政府に「ゆっくり急げ(Festinalente)」というラテン語の警句を振り返ってみることを切にお勧めする次第だ。
尹錫悦本人には慰安婦合意を再度構築し、徴用工問題も韓国内部の問題として扱おうとする考えはあったとしても、それをそのまま今の韓国の国民に訴えれば反日の波が再燃する可能性も大いにある故、その舵取りは大変に難しい。
いかにドライビングしてゆくのか。これからが(日韓関係の改善においての) 尹錫悦政府の真骨頂といったところだろうか。(文化日報をベースとしつつ筆者の見方を書かせていただいた)
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