もはや“政治内戦”状態のリアル・エヴァンゲリオン国家アメリカを襲う大分断

 

「リアル・エヴァンゲリオン」なアメリカ

米国では、キリスト教の一派である「福音派」と呼ばれる勢力が勢いをまし、いまやアメリカ政治を支配するまでになっている。とくに福音派は、「トランプ現象」を作り上げた。

アメリカ大陸への入植の歴史では、まず16世紀にカトリックが大陸に伝来、スペイン帝国がフロリダに最初のカトリック教区を設立した。

一方、16世紀に起きた宗教改革により、英国国教会が誕生したが、教会を改革しようとするピューリタンが英国から宣教活動を目的に、メイフラワー号でマサチューセッツに1620年に到着。

その後、英国では1641年から1649年にかけてピューリタン革命が起き、宗教的内戦を経て、王政が復活する。

しかしこれを不満とするピューリタンたちは、続々と新大陸であるアメリカに渡る。そして国教会よりも、より“ピュア”なキリスト教にとって理想の国である「神の国」をアメリカ大陸において、共和制体制下で設立させたのだ。

そして、1730年~1970年までに4度の信仰覚醒運動(リバイバル)を経て、現在でも米国の基盤ともいえるプロテスタント信仰が形成され、そのなかでも福音派が米国特有のキリスト教の“土着化”した宗教ともいえる独自の発展を遂げた。

福音派はプロテスタントが発展する過程でカルヴァン派から派生した宗派のひとつであり、アメリカ国内においてはプロテスタントの中でも「非主流派」という位置づけになるが、その数はアメリカの全人口の30%~35%、約1億人にのぼり、単一の宗派としては今やカトリックを抜いて、アメリカ最大の宗教勢力となっている。

その信者は主に「バイブルベルト」と呼ばれるアメリカ南部の州が多く、なかでもテネシー州、アーカンソー州、アラバマ州などでは福音派の信者数が人口の4割を占めている。一方、米国北東部のニューイングランド地方や西部各州では信者数が人口の10%に満たないなど、地域的な偏りもかなりある。

またニューヨークやシカゴ、ロサンゼルス、ボストンといった大都市圏では信者の数はさらに減少する。

さらにその人口に福音派が占める割合は、共和党の支持率や2020年の大統領選挙でトランプを支持した人の比率とほぼ比例する。

福音派の割合が高い州は、ほぼ例外なく人工妊娠中絶に厳しい制限がかけられていたり、あるいは同性婚やLGBTに対する差別意識が高いことも、世論調査でわかっている。

この地域は、軒並み新型コロナウイルスの感染率が高い。福音派はとくに南部で「メガチャーチ」とも呼ばれる1万人規模の大規模な礼拝を通じて、信者を増やしてきた。

そのため、コロナ禍においても大規模な礼拝を続けてきたことが、感染の拡大と関係しいている可能性がある。また、福音派の人々はワクチンに懐疑的な人やマスクの装着率も低く、そのことも感染拡大の要因となったと考えられている。

この福音派は英語で「エヴァンジェリカル」と呼び、「エヴァンゲリオン」と同義だ。まさに、アメリカは「リアル・エヴァンゲリオン」な国家なのだ。

福音派の最大の特徴は、聖書の福音書の内容を文字通り、“一字一句”解釈し、絶対視するところ。そのため、進化論を認めず、人工妊娠中絶や同性婚、LGBTに強い拒否反応を示す。

日々流れるニュースを学術的視点や新しい角度で解説する伊東 森さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

print
いま読まれてます

  • もはや“政治内戦”状態のリアル・エヴァンゲリオン国家アメリカを襲う大分断
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け