もはや“政治内戦”状態のリアル・エヴァンゲリオン国家アメリカを襲う大分断

 

止まらない分裂

いずれにしろ、米国の“分断”は予想以上に深刻。もはや、「政治内戦」ともいってよい。米国社会の分断は、共和党・民主党の2大政党が分極化しているため。両党の支持者の間に、強烈な敵対意識と恐怖、憎悪がある。

1970年~1980年代は、民主党が共和党よりも左派という意味においては違いがあっても、両者が“嫌い合う”というところまではいたらなかた。

両党の支持者はいずれも「白人のキリスト教徒」が大半を占め、文化的も大差はなかった。しかし2000年以降に対立が深まっていく。きっかけは、1990年代の共和党の下院議長であったニュート・ギングリッチだ。

彼は共和党の指導者となり、党員に対し“規範破り”をするようにけしかけた。とくに民主党を「裏切り者」「非愛国者」「反米」と呼ぶ論法を広める。

対立が際立ったのは、オバマ政権の8年間だった。共和党の代表的な政治家までもが、オバマ大統領を「非米国人」「社会主義者」などと呼ぶようになった。

分断の背景にあるのが、ここ50年間の2大政党の支持基盤に起きた3つの大きな変化だという。

第一に、南部の白人票が共和党に移り、選挙権を得ることができた黒人の大半が民主党員になったこと。第二に、中南米やアジアからの移民の大半が、民主党員となったこと。第三に、共和党・民主党の両党に支持が分かれていた福音派が、とくにレーガン政権以降、圧倒的に共和党支持になったことだ。

そのことにより、両党が誰の利益を代弁しているのか、明確になった。民主党は都市で暮らす教育を受けた白人と、ラティーノやアジア系、アフリカ系という人種的な少数派や性的少数派の人々。

一方、共和党の支持者となるのは、ほとんどが白人でキリスト教徒。彼らは有権者として多数派だったわけでなく、かつては経済も政治も支配していた。しかし、それが劇的に変わってきた。

1992年に有権者の73%を占めた白人のキリスト教徒は、2024年には米国で50%を割る。このことは、支配的な地位を失うことを意味するだろう。多くの共和党支持層が「生まれ育ったころの米国が奪われた」と口にするという。このような思いが共和党の過激化の引き金となり、分極化を煽る。

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