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レームダック化するバイデン

いずれにしろ、バイデン大統領は「人気がない」のだ。そして、それを招いた責任の一端が、バイデン大統領の指導力の欠如にあると米国人は考えている。

結果、就任直後は50%台を維持していたバイデン大統領の支持率は、現在は40%台前半から30%台にまで急落している。この不人気状態で、11月の中間選挙に突入し、現在は上下両院において優位に立つ民主党が過半数を失えば、バイデン大統領は早くも2年目にして“レームダック化”する。

バイデン大統領の支持率が急落した契機となったのは、昨年夏のこと。アフガニスタンからアメリカ軍を撤退させるなかで、タリバンが復権し、現地が大きな混乱に陥った。アメリカ軍の兵士13人を含む多くの人が亡くなったテロをも起き、バイデン政権の対応に大きな批判が集まった。

また、現在の高いインフレもバイデン批判を招く。そして、「豊かな政治経験」が売りだったバイデンは、「決められない政治」に陥る。

バイデンひとりにはすべての責任は負わせることは不可能だが、しかし議会のうち上院では与野党の勢力が拮抗しているため、結果、与党である民主党からひとりでも反対を出すと法案を成立させることが難しい綱渡りの状態がつづき、しかも民主党内の急進左派と中道寄りの一部の議員の対立が激化しており、“決められない政治”に拍車をかける。

ある世論調査では、バイデン大統領の支持率が歴代大統領のなかでトランプ前大統領につぐ低さとなった。とくに第2次世界大戦後に就任した歴代の大統領の就任から1年を比べると。バイデン大統領を下回るのはトランプ氏だけだった。

バイデン政権は、どのような態度で中間選挙に臨むだろうか。戦後、中間選挙では、ブッシュ(子)(2002年)とビル・クリントン(1998年)を除き、全ての大統領が野党に下院を奪還されている。

バイデン大統領の場合、下院で5議席、上院で1議席を失うだけで多数党の座から転落することになるが、現在の情勢では間違いなく、下院は奪還されるだろう。

だからといって、トランプに出る幕はないようだ。事実、これまでトランプとの関係が強かった共和党は、最近は一部、ミッチ・マコーネル上院院内総務を中心に、トランプの影響力の弱体化を図っている。ウクライナ危機のよるトランプのプーチン擁護の姿勢も明らかにリスクだ。

いずれにしても、米国の“分断”は止まらないだろう。

■参考文献

● 「キリスト教右派から読み解くアメリカ政治』SYINODOS 2017年2月27日
● 高木優「【詳しく】バイデン大統領はなぜ不人気なのか?」NHK NEWS WEB 2022年1月20日
● 佐藤由香里「バイデン大統領を待ち受ける中間選挙へのいばらの道~転換期の米国内情勢」論座 2022年3月11日

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2022年6月11日号より一部抜粋)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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