ドミトリー・パトルシェフとは?
ところが、ニコライ・パトルシェフは、次期大統領候補にはあがっていません。おそらく二つ障害があるのでしょう。一つは、彼がプーチンより1歳年上だということ。もう一つは、パトルシェフが「強すぎる」ということ。プーチンは、彼を信頼していますが、「強すぎる後継者」を嫌います。
そこで、「後継者候補」にあがってきたのが、ニコライ・パトルシェフの長男ドミトリー・パトルシェフ(44歳)です。
ドミトリー・パトルシェフは現在44歳で、農業大臣を務めています。その前は、ロシアの大手銀行VTBの副頭取、ロスセリホズバンクの頭取、ガスプロムの取締役などを務めていました。要するに、ドミトリー・パトルシェフを大統領にして、プーチンとニコライ・パトルシェフが「院政」を行うというシナリオなのです。
もちろん確定ではありません。
プーチンが死ねばミシュスティンにチャンス ←h3タイトル
このシナリオは、「病気ながらもプーチンが生き続けること」を前提としています。
プーチン的には、
1.病気ながらも死ぬまで大統領をつづける
のが上策でしょう。しかし病状が悪化して、執務が難しくなるかもしれない。その際は、
2.弱い大統領を立てて、院政を行う
これが、次善の策です。
3番目。
これもあり得るのですが、プーチンが病気で亡くなる。そうなると、憲法の規定に従い、ミシュスティン首相が「大統領代行」になります。その後選挙が実行されて、ミシュスティン大統領が誕生する。
ミシュスティンは、何者なのでしょうか?
この方は、連邦税務局の長官だった人で、全然シロビキと関係ありません。そして、戦争に関する発言が少ない。
それで、シロビキ、新興財閥、さらに欧米、ウクライナ皆が支持できる大統領になる可能性があります。ミシュスティンが大統領になれば、戦争を止めることができる。
妥協点は、
- クリミア、ルガンスク、ドネツクの地位を決めない
つまり、ロシアは、「クリミアは、ロシア領」「ルガンスク、ドネツク人民共和国は独立国家」と主張。ウクライナは、「クリミアは、ウクライナ領」「ルガンスク、ドネツクはウクライナ領」と主張。しかし、決着はつけないまま、「無条件」で停戦する。こんな展望も見えてきます。
結局、ウクライナ戦争の行方は、「プーチンの健康」に大きく左右されるのです。では、彼はいつまで生きるのでしょうか?それを知っているのは、神様だけです。
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2022年6月14日号より一部抜粋)
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