いずれにせよ、「働けど働けどなお、わがくらし楽にならざり」状態から日本が脱するには、基本に戻る以外ありません。基本とは、人への投資であり、「日本人の特性」を活かすこと。日本の強みは、チーム力です。かつてのセル生産方式のような、チームを基準にした思考を経営に取り入れるのです。
トヨタ生産方式を体系化した大野耐一氏は、「コストを下げたきゃ、コストをみるな。流れをみろ!川の流れ、よどみをみろ!」が口ぐせでした。セル方式で生産性があがったのも「よどみ」をなくしたからであり、人の可能性を経営者が信じたからです。
かつて米スタンフォード大学経営大学院教授を務めた組織行動学者のジェフリー・フェファー氏は、経営学を労働史から分析しこう説きました。「企業経営で一番の問題であり、経営者が気をつけなくてはならないのは、経費削減が実際には錯覚でしかないことだ。この錯覚こそが企業の力を弱め、将来を台無しにする」と。
そして「人件費を削るなどの経費削減が、長期的には企業の競争力を低下させ、経営者の決断の中でもっともまずいものの元凶であることは、歴史を振り返ればわかる。経営者が新しいと思っている大抵の決断は、ちっとも新しいものではなく古いものである場合が多い。歴史の教訓を全く生かさないと過ちが何度でも繰り返される」と。(『人材を活かす企業』より)
さて、みなさんは日本の賃金が上がらない理由、どうお考えでしょうか?それぞれのお立場でのご意見、ぜひお聞かせください。
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