プーチンの「偽悪戦略」に乗せられた人類。露がキーウ近郊にまで攻め込んだ意図

 

プーチンがドンバスだけでなくウクライナ全土を対象にする派手な侵攻劇を展開し、米国側が激怒してロシアに極悪のレッテルを貼って極度に経済制裁するように仕向けたことが、ロシアの優勢と米国側の自滅につながっている。プーチンは、あえて派手な侵攻劇を展開して極悪者になることで、経済と軍事の両面でロシアを勝たせ、米国側を自滅させている。プーチンはもしかして、常識的には大失敗である派手な侵攻劇を意図的に展開し、米国側がロシアに極悪のレッテルを貼って自滅的な対露制裁をやるように仕向ける「偽悪戦略」を事前に考えたうえで実行し、成功しているのでないか。

ウソだらけのウクライナ戦争

露軍がウクライナ侵攻を成功裏に進めていることは、ウクライナ市民の死者数の少なさにも表れている。国連(OHCHR)が6月16日に発表したところによると、2月末の開戦以来の戦闘で4,509人のウクライナの一般市民が死んだ。最近の記事で私は、ウクライナ市民の死者総数が5,000人ぐらいでないかと書いたが、それよりさらに少ない。露軍は4か月の戦闘で4,509人しかウクライナ市民を死なせていない。同時期に露軍は1万-2万人のウクライナ兵士を殺したことを最近の記事に書いた。露軍は開戦当初から、ウクライナの市民や街区や耕作地をできるだけ破壊せず、ウクライナの軍隊だけ破壊して非武装化と非ナチ化を効率的に進めると言っていたが、そのとおりにやっており、露軍の作戦は成功している。米軍はイラクで200万人(人口の1割)、アフガニスタンでも50万人以上を殺している。露軍が殺した数と桁が全然違う。殺した数から言うと、米国こそ戦争犯罪を重ねる極悪の国だ。

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Ukraine War Hits Grim Milestone As Civilian Deaths Surpass 10,000: UN(※ 題名が間違い)

プーチンは先日のサンクトペテルブルクの経済フォーラムで、非米諸大国のゆるやかな同盟体であるBRICSのうち、最近やる気がない南アフリカをのぞいた4か国(露中印伯)と、インドネシア・イラン・トルコ・メキシコという大きめの4か国を合わせた8か国を、新たなG8と名づけることを提唱した。日本など米国側の「旧G8」がロシアを敵視して追い出してG7に戻ったので、それへの復讐としてロシアが非米諸国を束ねて新G8を作った。米国側の旧G8はインフレと経済破綻で急速に衰退して時代遅れの存在になっており、これからは非米側の新G8の時代だ、というのがプーチンの言いたいことだ。

US policies led to ‘new G8′ – Moscow
Putin says Russia is building the new world order right now

こんな風にロシアはウクライナ開戦後、軍事的にも経済的にも予定通りに勝利・成功している。開戦時に派手な侵攻劇を展開する「大失敗」をやったことが、今
後の経済面の「大成功」につながっている。派手な侵攻劇は「失敗」でなく意図的な「偽悪戦略」だったと考えられる。プーチンは米国側の親露政治家たちから「なぜあんな派手な侵攻劇をやって極悪のレッテルを貼られる大失敗をやってしまったのか。ロシアを擁護したくてもできないよ」と言われているらしく、最近「キエフなどウクライナ全土を軍事作戦の対象にする戦略は、私が命じたことでなく、軍の上層部の希望で進めたことだ」などと言い訳している。ロシアは重要なことを全部プーチンが決める。キエフへの派手な侵攻劇は、軍だけで決めて実行できるものでなく、プーチンが決めた策略である。プーチンは「大失敗しちゃったよ。ぽりぽり。でへへ」とニヤニヤしている。

Putin: Era of Unipolar World Has Ended Despite Attempts To Preserve it at Any Cost
米欧との経済対決に負けない中露

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