前回の記事『プーチンを裏切り激怒させた男。ロシアに反旗を翻した国はどうなるのか?』ではプーチン大統領がトカエフ大統領に裏切られたという話題を紹介した無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』。著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんはプーチン大統領がさらに他の国にも裏切られたと語っています。
プーチンを裏切るトルコ・エルドアン大統領
先日、「カザフスタンのトカエフ大統領が、プーチンを裏切った」という話をしました。「まだ読んでない」方はこちら。
今度は、トルコのエルドアン大統領が、プーチンを裏切りました。どういう話なのでしょうか?
トルコ、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟を支持へ
プーチンは、ウクライナ侵攻の理由の一つに、「ウクライナのNATO加盟を阻止すること」をあげています。その目的は、達成されるかもしれません。
ところが、「副作用」が出てきました。これまでNATO非加盟で、中立を維持してきた北欧のフィンランドとスウェーデンが、一転NATO加盟を目指すようになった。両国は5月18日、そろってNATO加盟申請を行いました。
「ウクライナのNATO加盟を阻止しようとしたら、フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟したくなった」
プーチンは、驚愕したことでしょう。しかし、希望もありました。独裁者同士仲良しのトルコのエルドアン大統領が、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟に反対してくれている。
トルコはNATO加盟国ですが、エルドアンは独裁者なので、欧米と複雑な関係にあります。実際、エルドアンは、欧米より、プーチンといい関係にありました。東京新聞3月28日。
(トルコは)NATOの反対を押し切って2020年10月、ロシア製地対空ミサイルS400を導入。当時のトランプ大統領を激怒させたこともあります。
また、両国は経済的には関係を深めています。トルコは天然ガス輸入の4割以上をロシアに依存しています。2020年にはロシアから黒海を経由してトルコに天然ガスを送る全長930キロ超のパイプラインが完成しています。
そして、加盟国の一国でも反対すれば、フィンランドもスウェーデンもNATOに入れないのです。
ところで、どうしてトルコは、フィンランド、スウェーデンの加盟に反対なのでしょうか?両国が、トルコからの独立を目指すクルド人の活動家をかくまっているからです(クルド人活動家は、エルドアンから見ると、「テロリスト」「分離主義者」になります)。
しかし、私は6月25日号で、こんなことを書きました。
中立国だったフィンランドとスウェーデンがNATOに加盟申請しました。現状トルコが反対していますが、いつまでも反対しつづけることはできないでしょう。
そして、実際エルドアンは、一転両国のNATO加盟支持に回ったのです。読売新聞オンライン6月29日。
北大西洋条約機構(NATO)へのスウェーデンとフィンランドの新規加盟を巡り、加盟に反対していたトルコが28日、テロ組織の活動抑止などの要求が受け入れられたとして加盟支持に転じ、北欧2国のNATO入りが固まった。
これで、フィンランド、スウェーデンのNATO加盟が確実になりました。プーチンは、地団駄を踏んで悔しがったことでしょう。