取り残される日本と欧州。米国より「ロシアと組む」ことを選んだ世界

 

BRICSにはサウジだけでなく、イラン、トルコ、エジプトも加盟申請する予定だ。今後、サウジとイランの両方がBRICSに加盟したら、サウジとイランの和解は中露などBRICSの非米諸国によって仲裁されることになる。BRICSではすでに、中国とインドが対立しつつも両方がBRICSに加盟し、協調できる部分で協調している。中印は2国間で対立しているが、もう一段大きな視野で見ると、中印ともに米国の単独覇権体制を否定する非米側の国として仲間だ。今後、サウジとイランもBRICS内で中印みたいな協調関係になっていくことが予測される。サウジもイランも産油国であり、石油ガスなど資源類を持っている非米側が米国側より優勢になる今後の2分割された世界では、サウジもイランも非米側に入っておいた方が策だ。

“Preparing To Apply For Membership” – Saudi Arabia, Turkey, Egypt Plan To Join BRICS
いずれ和解するサウジとイラン

米国ではトランプ前大統領が、イスラエルの要請を受け、米国がイスラエルとサウジUAEをまとめてイラン敵視の同盟体を作る「イラン敵視を口実としたイスラエルとサウジUAEの接近」を「アブラハム合意」としてイスラエルのために実現してやった(パレスチナ問題が未解決なのでサウジは非公式な参加)。バイデンの今回の中東歴訪の2番目の目的は、イスラエルのためにトランプが作ったアブラハム合意の体制を継続することだ。バイデン政権は、これを自分たち独自の中東戦略であるかのように言っているが、それは間違いで、トランプの戦略をイスラエルに求められて継承しているにすぎない。

トランプの中東和平
Biden hopes to preside over Israel-Saudi wedding
Israel Reveals It’s Building a US-Backed Regional Military Alliance Against Iran

バイデン政権はもともと、イスラエルともサウジとも仲良くしたいと思っていなかった。米民主党はオバマ以来イスラエルと仲が良くない。今の民主党ではパレスチナの味方をしてイスラエルを公式に非難するリベラル左派が強く、彼らはイスラエルと犬猿の仲だ。バイデンがイスラエルを訪問するのは、愚策ばかりやって米国内で人気が落ち、今秋の中間選挙や2024年の大統領選で惨敗しそうなので、米国の政治に強い影響力を持っていたイスラエルの力を借りたいからだ。バイデン政権が何もしないと、イスラエルはトランプ路線の共和党支持を強めてしまう。

De Blasio To AIPAC: Drop Dead
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解体していく中東の敵対関係

バイデンはもともと6月末にドイツでのG7サミットに出席するため訪欧した時に、同時に中東も訪問する予定だったが、中東の部分だけ2週間延期した。その理由は表向き「バイデンが高齢なので欧州と中東の両方を歴訪すると疲れてしまうので2つに分けることにした」というものだが、実際の理由はそうでなく、6月21日にイスラエルの連立政権が崩壊してバイデンの訪問に対応できなくなったためだ。イスラエルは、米大統領の訪問日を変更させてその理由を米マスコミに歪曲報道させるだけのパワーがまだある。

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覇権の暗闘とイスラエル

米民主党左派は人権侵害を理由にサウジのことも大嫌いで、バイデンはできればサウジにも行きたくなかったはずだが、石油価格の高騰を抑えるためにはやむを得ないと思っている。しかし、たとえサウジが協力したとしても、世界的な石油高騰を抑えることは難しい。それに、すでに書いたようにサウジは非米側に転じており、もう米国に協力したくない。

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