福祉施設では切実。「機会均等」に欠かせない個人データ善用の道筋

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コロナ禍でリモートによるコミュニケーションが活発になる前から、移動に制約があるケースも多い福祉の現場では、その重要性が意識されていました。しかし、そうした取り組みに及び腰の施設もあるのが現状のようです。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』では、著者で生きづらさを抱えた人たちの支援に取り組む引地達也さんが、「データ」「個人情報」の枠組みと利用や悪用について、明確な情報共有がないために根拠のない恐れを抱く施設があると指摘。「機会不平等」をなくすために個人情報データを“善用”する道筋の必要性を伝えています。

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データの適切な善用が「機会不平等」をなくしていく

ジャーナリストの斎藤貴男氏の著作『機会不平等』は教育、派遣社員、労働組合、高齢者福祉、経済政策や優生学等を題材に日本社会での不平等に斬り込む名著であり、その成り立ちを考える時に私たちの社会のありかたや個人の思想性が突き付けられる。

この不平等を解消するために、私は情報格差をなくすコミュニケーション環境の在り方を考えて、私なりに実践してきたつもりだが、ここにきて大きなテーマが立ちはだかっている。それは「データ化された個人情報」の取扱いである。

コミュニケーションがバーチャルになるほど、その世界で個人とはすなわちデータになっていく。そのデータは個人そのものであるとの認識がコミュニケーションを成り立たせるわけで、その新しい関係性における倫理観や保護など、議論すべき点は多い。

このコミュニケーション自体は誰もが幸福になるための道筋でもあるから、早急に社会で共有し議論を深めなければならないだろう。

すでに私たちの個人情報はグーグルで検索したり、アマゾンで買い物をしたり、フェイスブックで発信している時点で他者に提供している。便利なコンテンツに接するたび、ネット上での私はデータ化されており、この保護は今後の活動の進展には欠かせない議論である。

この中で欧州連合(EU)の、個人情報(データ)保護を目的とした「EU 一般データ保護規則(General Data Protection Regulation(GDPR)」を考え日本社会で対応する論点を整理していくのが妥当ではないかと思う。

これは宮田裕章・慶応義塾大医学部教授の個人情報データを「公共財」と捉え、社会が善用するために新たな価値観で人々の「生きる」を再発明する考え方に大いに賛同した上での、必要なプロセスではないだろうか。

GDPRは個人情報のデータ保護はすなわち基本的人権の確保に直結するとの考えを基本としている。

2016年5月から適用が開始されており、例えばEUを含む欧州経済領域(EEA)域内で取得した「氏名」「メールアドレス」「クレジットカード番号」などの個人データをEEA域外に移転することを原則禁止している。

違反行為に対しては、高額の制裁金が課される仕組みで、GDPRに基づき欧州各国では規制が制定されている。

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