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エアコン普及率わずか5%で悲鳴。欧州を襲う記録的猛暑はなぜ起きた?

日本では異例の早さで梅雨が明け、記録的な暑さとなっていますが、世界でもどうやら状況は同じようです。今回のメルマガ『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』では著者でジャーナリストの伊東森さんが、世界での熱波の影響や地球温暖化との関係について詳しく語っています。

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日本、そして世界で熱波が到来。しかしヨーロッパのエアコン普及率はわずか5%、地球温暖化との関係は?

日本、そして世界ともに記録的な暑さが続いている。日本では異例の早い梅雨明け同時に、記録的な暑さが到来。この記録的な暑さは世界でも同様。ヨーロッパ、インド、パキスタンでは40℃を超える厳しい暑さに見舞われた。その影響により、森林火災や干ばつも起きている。

とくに6月中旬のヨーロッパの気温は平年を10℃も超えるような暑さだった。猛暑は世界中のメディアでも話題に。

英BBCは、「日本で猛烈な熱波 1875年の観測開始以降で最悪」との見出しで、「日本が過去150年近くで最悪の熱波に見舞われており、各地でうだる暑さが続いている。」と伝えた(1)。

同じくBBCは、「猛烈な熱波が欧州を北上、仏英で猛暑警報 スペイン北部で43度観測」と題し、

「スペイン北部では18日、摂氏43度を記録した。フランスとイギリスではそれぞれ猛暑警報が発令された。フランス、ポルトガル、スペイン、ギリシャで発生した山火事では、数千人が避難を余儀なくされている。イギリスでは過去最高気温に達すると予想されている。専門家はフランスの一部が暑さによる「終末」に直面しているとしている。」とした(2)。

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・日本 異例の早い梅雨明けとともに記録的な暑さが到来

日本では6月27日に梅雨明けした九州南部や東海、関東甲信、そして28日に梅雨明けした九州北部から北陸に続き。29日には東北南部が梅雨明けしたとくに東北南部の6月の梅雨明けは、統計の開始以来、初めてのこと。

異例の早い梅雨明けと記録的な暑さとなったのは、太平洋高気圧の勢力が例年より早いペースで強まったため(3)。

加えて、関東付近の上空1500メートルの付近に23℃という真夏でも見られないような暑い空気が流れ込んだためという。

東京都心では6月下旬にかけて5日連続で猛暑日を記録、統計開始以来、2番目に長い記録となった。群馬県伊勢崎市では気温が40℃まで上がり、6月では2度目の40℃台を記録した。

猛暑とともに、新型コロナウイルスの第7派が到来。熱中症の対応もしないとならないため、医療の現場で逼迫が起こっている(4)。

また、熱中症による入院や点滴治療費などを補償する、少額の保険も登場した(5)。

熱波はヨーロッパでも。しかし欧州でエアコンの普及率はわずか5%程度

猛暑はヨーロッパでも。

イギリスでは19日、観測史上初となる40℃の気温が観測。ロンドン南西部にあるヒースロー空港では昼までに40.2℃を記録。2019年にイングランド東部のケンブリッジで観測された38.7℃を上回り、最高を記録した。

フランスでも前日、各地で史上最高気温。熱波は欧州各国で観測、各地で森林火災を引き起こした。

このようなヨーロッパの猛暑の原因は、偏西風の蛇行によりアフリカ北部から熱波が北上したことが原因とされる(6)。偏西風の蛇行は、北極付近の急激な温暖化が要因とされる。

世界気象機関(WMO)は、「人間の活動によって北極が温暖化し、偏西風の蛇行が生じやすい条件を強化している。そのため北半球各地で夏の雨や乾燥、高温(などの異常気象)を長引かせている。」と指摘する。

ただ、ヨーロッパはエアコン普及率が低い。ワシントン・ポストによれば、ヨーロッパのエアコンの普及率はわずか5%未満(7)。

しかし、国際エネルギー機関(IEA)によれば、今回のような熱波の到来により、今後20年間で、ヨーロッパのエアコンの数は2倍になると予想されている。

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・地球温暖化との関係は?

このような異常な気候は、地球温暖化や気候変動と関係があるのだろうか。結論からいえば、日本の梅雨明けは早いのは、必ずしも地球温暖化のせいとはいえないまでも、日本の梅雨明け後、ここまで暑いのは地球温暖化が理由のひとつであると断言してよい。

ヨーロッパの熱波についても、同様のことがいえる。たとえば夏の東京は、100年前と比べ、気温が2.1℃上がっている。

地球温暖化による地球全体の気温上昇の度合いは、約1.09℃/100年であるため、夏の場合、暑さの半分は地球温暖化による影響、残りの半分は都市化(ヒートアイランド現象)によるものだ(8)。

また、一般的に地球温暖化が進むと気象の現象がより極端になるという、「極端現象」が起きるといわれる。そのため、異常気象も発生しやすい。

1990年に発表されたIPCCの報告書では、「人為起源の温室効果ガスは気候変化を生じさせる恐れがある。」という表現で、人類の温暖化への影響は断定していなかった。

ところが、昨年の2021年に発表された最新の報告書では、「人間の影響が大気・海洋を温暖化させてきたことは疑う余地がない。」とまでいわれるようになった。

気候変動による危機は、そこまで来ている。

(1)BBC NEWS JAPAN「日本で猛烈な熱波 1875年の観測開始以降で最悪」2022年6月29日

(2)BBC NEWS JAPAN「猛烈な熱波が欧州を北上、仏英で猛暑警報 スペイン北部で43度観測」2022年7月19日

(3)吉田友海「まだ40℃の酷暑が継続か 今回の異例の暑さいつまで  来週は戻り梅雨で暑さに変化」tenki.jp、2022年6月29日

(4)産経新聞「新型コロナ第7波 医療逼迫再び 外来急増、熱中症対応」Yahoo!ニュース、2022年7月17日

(5)高橋諒子「熱中症保険が続々登場 背景に猛暑とコロナ禍 収支悪化のリスクは?」2022年7月18日

(6)宇佐見昭彦「欧州でも熱波襲来 スペインで45℃超え、山火事が相次ぎ「気候変動は間違いなく起きている」」東京新聞、2022年7月16日

(7)Rick Noack and Jennifer Hassan、「Europe never understood America’s love of air conditioning until now」ワシントン・ポスト、2019年6月25日

(8)千種ゆり子「記録的な猛暑は「温暖化のせい?」 科学的に正しく答えると…【解説】」HUFFPOST、2022年7月2日

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image by: Melanie LemahieuShutterstock.com

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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