プーチン大統領の蛮行により国家存亡の危機に直面するウクライナに対して、最大限の支援を続ける西側諸国。しかし世界には、長期にわたりウクライナ以上の人道危機にさらされている人々が多数存在することをご存じでしょうか。今回のメルマガ『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』では著者でジャーナリストの伊東森さんが、今現在、世界で続いている紛争の数々を詳しく解説。ウクライナ以外の地でも多くの命が失われている現実を紹介しています。
この記事の著者・伊東森さんのメルマガ
世界では今、どのような紛争が起きているのか?
ロシアのウクライナ侵攻が始まって、まもなく4カ月が経過する。一方で、ウクライナにかぎらず、紛争と呼ばれるものは世界中で発生しているのが現実だ。
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は4月13日、黒人と白人に影響を及ぼしている緊急事態をめぐり、世界の関心に偏りがあると訴えた(*1)。
まず事務局長は記者会見で、ロシアがしたウクライナに対する支援について、「世界全体に影響を及ぼす」ことから、「とても大事」であると言及。
一方で、世界の違う場所で人道危機に陥っているエチオピアのティグレ州やイエメン、アフガニスタンやシリアは、ウクライナと同じくらいの注目を集めていないと指摘。
これらの地域が受ける支援は、ウクライナへの支援のごく一部して寄せられていないとする。
さらに、
黒人の命と白人の命について、世界は本当に同じだけの関心をもっているのか疑わしい。
BBC NEWS JAPAN 2022年4月14日
とまで発言した。
つづけて、
率直に言って、世界は人類を等しく扱っていない。人類は平等だが、特別扱いを受けている人というのは存在する。これを指摘するのは心が痛む。目に見えることだからだ。非常に受け入れ難いが、現実だ。
BBC NEWS JAPAN 2022年4月14日
と語った。
そもそも、テドロス氏自身が、言及したエチオピアのティグレ州の出身。ティグレ州は、国連が、救命のために1日に100台分の人道物資の供給が必要であるとしている場所だ。
ティグレ州では、2020年にエチオピアの政治を30年近く支配してきた地域政党のティグレ人民解放戦線(TPLF)とエチオピア政府軍による戦争が勃発。
これまでに多数の民間人を含む数千人の死者が出ており、今なお人道支援を必要としている人が数百万人に上るとされるも、しかし政府は救援活動を妨害しているとされ、批判を受けている。
また、現地では戦争にかかわるすべての当事者が、超法規的な処刑をし、性暴力もふるっているという。
イエメンについては国連が長らく、「世界最悪の人道危機」であると強調。アフガニスタンでは、2,400万人が生存のための人道支援を必要としていると、国連は認定。
シリアでは内戦が11年続き、死者は50万人近くにのぼり、何百万人もの人が住む家を失ったとされる。
世界では今、どのような紛争が起きているのか。
目次
- エチオピア ティグレ州 複雑な民族構成による衝突 35万人が飢餓状態
- イエメン 世界最大の人道危機
- アフガニスタン アメリカ史上最長の戦争
- シリア 内戦は11年にも及ぶ
この記事の著者・伊東森さんのメルマガ