イエメン 世界最大の人道危機
イエメンでは、2015年の3月から武力衝突が激化、それとともに貧困や食糧危機も拡大した。2021年時点で、イエメンの人口の66%にあたる2,070万人が支援をひつようとしており、そのうちの54%が18歳未満だ(*4)。
さらに国内の別の場所に難を逃れ、避難生活を送る国内避難民も400万人に及ぶ(*5)。このようなイエメンの事態は、「世界最大の人道危機」とさえ呼ばれる(*6)。
イエメンは、中東のアラビア半島の南東に位置。面積は、日本の約1.5倍の約55平方km、人口は2,892万人。公用語はアラビア語。
首都サヌアにある旧市市街地は、紀元前10世紀ごろから存在する「世界最古の街」のひとつといわれ、かつては「海のシルクロード」の中継地として栄えた。
コーヒーの「モカコーヒー」という名前は、かつてのイエメンの港町のモカから、コーヒー豆が積み出されたことが由来となっている。
イエメンでは、2021年に人口の半数以上の1,620万人が、緊急または危機的なレベルの食料不足に陥り、さらに225万人以上の5歳未満の子どもたちと、100万人以上の妊産婦が、急性の栄養不良になると考えられている(*7)。
イエメンでは、時間的に10分に1人の子どもが、本来ならば予防可能な病気で亡くなっている(*8)。またイエメンの保健施設のうち、十分に機能しているのは、51%に過ぎない(*9)。
武力衝突が長引き、安全な飲み水やトイレなどの衛生施設が不十分で、コレラの流行にもつながった。
石鹸を使うことのできるのは人口の45%のみで(*10)、新型コロナウイルスの感染予防も十分にできていない状況だ。
イエメンでは重大な人権侵害が相次いでいる。子どもの児童労働や児童婚、軍への徴兵や利用・性暴力や搾取などが相次ぎ、支援を必要としている子どもは860万人にのぼる(*11)。
アフガニスタン アメリカ史上最長の戦争
2021年8月のタリバンによる全土掌握以前から、アフガニスタンはさまざまな危機に直面してきた。厳しい干ばつにより作物は育たず、そこに新型コロナウイルスの感染拡大が襲った。
貧困が深刻化し、あるいは長引く紛争により300万人を超える人が国内避難民となっている(*12)。
2022年に入ってから、アフガニスタン国内による紛争で避難を余儀なくされた約66万8,000人のうち、約50万人は首都であるカブールに逃れている。
ただ、カブールは標高1,800メートルに位置し、冬になると氷点下にまで気温が下がる。
多くの人はその寒さを、仮設のシェルターや暖房設備のない借家で過ごし、食事もままならない状態だ。
アフガニスタンのよるアメリカの正式な戦闘任務は2014年には完了したにもかかわらず、2017年8月、当時のトランプ大統領は戦争で荒廃したアフガニスタンに駐留する米軍を増強し、アメリカ史上最長の戦争を継続すると述べた(*13)。
2001年9月11日、アルカイダのメンバーが飛行機4機をハイジャックし、そのうち2機がニューヨークのワールドトレードセンターへ、1機がペンタゴン(国防総省)に突入、1機はペンシルベニア州に墜落、3,000人近くが死亡した。
ただ、ハイジャック犯の中には、アフガンスタン国籍の者は1人もいなかった。しかし、当時のブッシュ大統領は、「対テロ戦争」を宣言。
アルカイダと、アフガニスタンのタリバン政権に匿われ、支援を受けているとして、オサマ・ビン・ラディンを非難。
2001年10月7日に、「不朽の自由」作戦と称された軍事作戦を決行、アフガニスタンで空爆が開始された。
現在、タリバンは再び全土を掌握。国際的な制裁とアフガニスタン政府の資産の凍結、海外からの援助の停止が重なり、アフガニスタンは深刻な経済危機に陥っている。
さらに干ばつが襲い、農作物の不作より、状況は悪化、失業率と物価も上昇し、人口4,000万人の半数の2280万人が飢餓の状態にあるという。
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