国際的アピールに成功。NYタイムズが北朝鮮「拉致被害」を報じた意味

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従軍慰安婦問題は言うに及ばず、国際的アピールを苦手とする日本。今のままでは、国として守られるべき立場がますます危うくなる可能性も否定できません。起業家で大学教授でもある大澤裕さんも、常々そのような危機感を訴えてきた一人。大澤さんは自身のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』で今回、北朝鮮による拉致被害がNYタイムズに掲載された事例を紹介しつつ、日本が国際社会で自国の主張を通すためすべきことを解説しています。

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NYタイムズが報じる北朝鮮被害者

安倍元首相が力をいれていた事のひとつに北朝鮮の拉致被害の問題があります。

小泉内閣の官房副長官として訪朝し、後に拉致被害者5人の帰国を実現させました。首相になってからも折をみてこの問題に言及していました。

2019年にはトランプ大統領と拉致被害者御家族との面会をアレンジして米国の関与を確認し国際的な喚起も促しました。

安倍元首相の死去とともにこの北朝鮮拉致被害者の解放の運動もすたれていくのでしょうか?

北朝鮮の被害者は日本人だけではありません。

今回紹介するのは2022年6月22日のニューヨークタイムズの記事です。

北朝鮮当局による身体的虐待や拉致をめぐる民事訴訟は正義を求める人々により行われている。この孤立した国家から金銭を回収することは非常に困難であるにもかかわらずである。

 

米国では、1980年代から、政府関係者を含む個人を相手に民事裁判を起こすケースが相次いだ。

 

1976年に制定された外国主権免責法で、外国政府に対するテロ事件などのカテゴリーに連邦裁判所を開放したためである。

 

おそらく最近の最も注目すべき勝利は、北朝鮮の刑務所で脳に損傷を負い、2017年に死亡したアメリカ人大学生オットー・ワームビア氏の両親のケースである。

 

両親は翌年、5億ドル以上の損害賠償を勝ち取った。そして2021年には、1968年に北朝鮮に人質にされていたアメリカ海軍の船「U.S.S.プエブロ」の乗組員(とその遺族)に対して、同じ裁判所が23億ドルを認定した。

 

しかし米国で北朝鮮に対する民事判決を勝ち取っても、すぐに賞金を受け取ることはできない。その理由の一つは、北朝鮮には米国当局が差し押さえることのできる資産や財産がほとんどないからだ。

米国の裁判所で北朝鮮を訴えている人がいるのです。

主張が認められても、その賠償金が支払われる可能性は極めてひくいにもかかわらずです。

記事は続きます。

2019年、オットー・ワームビア氏の両親は、アメリカ当局が拿捕した北朝鮮の貨物船を売却した際に、非公開の金額を回収した原告の1人である。

 

そして1月には、ニューヨーク州の裁判所が、北朝鮮の国営銀行から差し押さえる予定だった24万ドルも、家族に渡すべきとの判決を下した。

 

その部分的な成功は、米国外でも現地の裁判所で北朝鮮を訴える人たちを刺激している。

 

1人は、日本で生まれた朝鮮族の女性、川崎栄子さん(79)で、1960年に北朝鮮に移住し、最終的に北朝鮮人男性と結婚した。2003年に夫の死後、子供たちを残して亡命するまで日本に戻らなかった。

 

川崎さんは、1910年から1945年まで朝鮮半島を植民地支配した日本が推進する平壌移住計画で北に渡った。彼女は北朝鮮の工場で何年も働き、差別と食料不足に苦しんだという。

 

ワームビア夫妻が米国で勝訴した数カ月後の2018年、川崎さんら4人の脱北者は、再定住プログラム下で被ったという損害賠償を求めて、北の指導者である金正恩を東京の裁判所に提訴した。

 

裁判所は3月、20年の時効が成立していたこともあり訴えを却下した。しかし、裁判所は彼女らが提出した証拠の多くを認め、将来的に北に対する訴訟の土台を築く可能性がある。弁護士は当時、控訴する予定であると述べた。

 

川崎さんの子どもたちは北朝鮮に残っているが、川崎さんはインタビューで、今回の判決と、2018年のワームビア一家の裁判での勝利が、控訴に勝てるという希望を与えてくれたと語った。

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