長年問題にされていながら抜け道を巧みに利用し改善されない高級官僚たちの天下り。一般人から見てあまりに異次元な報酬を得ている天下りの実態の一例として、日本証券金融株式会社(通称「日証金」)のケースを同社の株主である株式会社ストラテジックキャピタルがウェブサイト上で明らかにしました。この記事に注目したのは、メルマガ『週刊 Life is beautiful』著者で、「Windows95を設計した日本人」として知られる世界的エンジニアの中島聡さん。こうした問題が氷山の一角でしかない状況が、日本の経済のイノベーションを不可能にしていると厳しく指摘しています。
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● 日本証券金融株式会社〜日本証券金融の改革のために〜 株式会社ストラテジックキャピタル
信用取引の株券の貸付け、資金貸付けを行う証券金融会社である日本証券金融株式会社(通称「日証金」)は、その仕事が認可性であることから、実質的に独占的な立場を持つ特殊な上場企業です。このウェブサイトは、日証金が日銀の天下り法人であり、まともなガバナンスが行われているとは思えない状況を丁寧に説明しています。
内容を箇条書きにすると、
- 上場した1950年以来、社長を務めた10人は全員が日銀OB
- 日証金の執行役は平均で5,027万円の高額報酬
- 天下りした日銀OBは、社長、会長、特別顧問として十数年に渡って報酬を得続ける
- 社長だけでなく、数多くの日銀OBが、常務・専務として天下りし続けている
- 子会社である日証金信託銀行が、日証金を退任した日銀OBのさらなる天下り先として機能している
となります。
とんでもない不正が行われている状況ですが、これは氷山の一角で、日本ではこのような天下り法人があらゆる業界で数多く作られ、国民の目の届かないところで、莫大なお金が引退した高級官僚たちに流れているのです。それだけでも大きな問題ですが、それが健全な競争を阻害し、(天下りの対象にならない)ベンチャー企業による経済のイノベーションを実質的に不可能にしているのです。
これこそが、暗殺された石井紘基議員が暴こうとしていた「特別会計の闇」でもありますが、明確な「首謀者」もいないため、全体像を把握することがそもそも不可能だし、政治家たちもこれを「必要悪」として黙認している面もあるため、こんな不健全な状況がいつまで経っても解消されないのが、日本の現状なのです。(『週刊 Life is beautiful』2022年7月26日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみ下さい。初月無料です)
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