世界中が思った“おまいう案件”。「文化の盗用」とディオールに抗議する中国人

NANJING CHINA-September 8, 2013: pedestrians walk past a billboard at the Dior store in Nanjing, Xinjiekou. China has become the world's largest consumer market for luxury goods.NANJING CHINA-September 8, 2013: pedestrians walk past a billboard at the Dior store in Nanjing, Xinjiekou. China has become the world's largest consumer market for luxury goods.
 

世界的ブランド『ディオール』が中国人から大きな批判を浴びています。「文化の盗用」を声高に叫んでいますが、どうやらそれは“おまいう案件”と思われているようです。中国出身で日本在住の作家として活動する黄文葦さんが自身のメルマガ『黄文葦の日中楽話』の中で騒動を詳しく紹介。文化の盗用と流動について語っています。 

この記事の著者・黄文葦さんのメルマガ

初月無料で読む

ディオール騒動の例から考える文化の盗用と文化の流動

ディオール(DIOR)が2022年ウィメンズ・フォール・コレクションで披露したミドル丈のスカートが、中国の明時代の伝統的な衣服であるマミアンスカートに似ていると中国のネットユーザーの間で物議を醸している問題について、多くの現地の中国人留学生がパリのシャンゼリゼ通りにあるディオールの店舗前に集結し、抗議を行った。

抗議のために集まった学生の多くはマミアンスカートや漢服を着用し、ディオールからの謝罪と問題となったスカートの販売中止を求めた。この抗議の様子はウェイボー(Weibo)やウィーチャット(WeChat)でライブ配信され、数十万人が視聴したという。

中国のマスコミが直ちにディオールによる「文化の盗用(cultural appropriation)」を批判し始めた。「ディオールは、中国の伝統的なマミアンスカートを盗用し、自身のオリジナルなデザインとし、製品表示には中国要素に触れなかった。

世論の反発を受け、同ブランドは中国語サイトから商品を取り下げただけで、現在まで前向きな対応をしておらず、中国の消費者の気持ちを大きく傷つける行為となった」と強く批判した。

中国では、ディオールに抗議した中国人留学生たちはまさに英雄と見なされている。この抗議行動は、近年の中国伝統文化に関連する海外に向ける抗議行動の一つに過ぎず、共通するのは、それが中国人のナショナリズムの波を刺激した。

「文化の盗用」が中国ネット上で繰り返し言及されるようになったのは2015年で、2018年に注目のピークを迎えた。

当時、18歳のアメリカ人女子高生が中国のチャイナドレスを着てプロムに参加した写真をSNSに投稿し、中国系アメリカ人のネットユーザーから「私の文化はあなたのプロムドレスではない」と非難され、「文化の盗用」という概念で議論を巻き起こした。

今から見れば、アメリカ人女子高生が中国のチャイナドレスを着ることは、歓迎すべきではないか。「文化の盗用」ではなく、「文化の流動」だと言える。流動するからこそ、文化が広げていく。

文化の流動はいい刺激の相互作用であるはずで、ファッション・デザインが異なる文化要素の間を行き来し、敬意を払うこと。

遼・宋の時代にさかのぼり、明・清時代に流行したマミアンスカートのデザインコンセプトは、デフォルトで技術のパブリックドメインにあり、いかなる個人または組織団体によっても特許化されていない。権利の主体が存在しないため、知的財産の侵害にもならない。

逆に言えば、ディオールのいわゆる「マミアンスカートに似ているミドル丈のスカート」が定着されれば、ブランドはそのデザインを特許化する権利を有するということ。

この記事の著者・黄文葦さんのメルマガ

初月無料で読む

【関連】安倍元首相の銃殺事件で中国国民に沸き起こる反日ナショナリズム

print
いま読まれてます

  • 世界中が思った“おまいう案件”。「文化の盗用」とディオールに抗議する中国人
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け