失墜する「熊本ブランド」。アサリの次はタケノコで偽装発覚、悪習を是とする罪意識の低さ

2022.08.02
by たいらひとし
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1月のアサリに続いて今度はタケノコ…。熊本の食品加工業者が中国産のタケノコの水煮を「熊本産」や「九州産」と偽り販売し、不正競争防止法違反の疑いで逮捕された。相次ぐ偽装で失墜寸前の熊本ブランド。なぜこうした事態が起きてしまうのだろうか。

アサリの次はタケノコ、蔓延する罪意識の低さ

今回摘発されたのは熊本県下益城郡美里町にある食品加工業者「砥用食品」。同・役員の榊勇一容疑者(51)と元役員の松野治美容疑者(53)は、中国産のタケノコの水煮を「熊本県産」や「九州産」だと偽って九州内にある複数の食品卸会社に販売していた。

去年6月中旬頃に外部からの情報提供があり、警察が捜査を進めており、二人は容疑を認めているという。

現在、国内に出回るタケノコの加工品はほとんどが中国産。それ以前にも加工用のタケノコはほとんど中国産だったが、2007年から2008年に発生した「中国毒ギョーザ事件」が起こり、中国産に対するイメージが悪化し、「中国産タケノコ」は売れなくなった。

そこで、国産を調達できなかった国内の山菜加工業者が中国産を国産と偽って販売したことで2008年に産地偽装が摘発され、30社以上の山菜加工業者が姿を消してしまった。

いまでは国産でタケノコを加工する業者はほとんどなくなり、ごくわずかだ。

そう簡単に国産タケノコの水煮を加工できるはずもないのというのは、業界では常識。最初から「砥用食品」は疑いの目で見られていたのかもしれない。

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信用を取り戻すのは至難の業、産地偽装の大きすぎる代償

「報道特集」(TBS系)の3年に渡る調査で、中国産アサリを干潟で短期間畜養しただけで熊本産だと偽り全国に販売されていたことが発覚。熊本県はアサリ業者に3年間の取引記録の保存の義務化や、産地証明の提示をする取り組みが始まっている。

一方、中国産を中国産とちゃんと表示し、安全を証明する取組みも行われている。しかし、消費者の「中国産」に対する不審感は根強く、中国産ならばアサリ自体を置かないというスーパーも多いようだ。

タケノコの産地偽装にしても、中国産だと全く売れないので、やむなく国産と偽ったと考える。不正が不正を呼ぶ負のループが止まらない。

ところが農林水産省のデータによるとアサリは中国産が約7割、タケノコの加工品は全消費量の83から90%が輸入品であり、そのほとんどが中国産だ。

現実的には中国輸入に頼っているのに、消費者自体は中国を敬遠するという矛盾が起きている。そのことが産地偽装を引き起こしている原因に繋がっているかもしれない。

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とはいえ、産地偽装を行えば信用は失墜し、ブランドが傷つくのは当たり前。失う代償が大きいことに、食品を扱う業界は改めて気付かなければならないだろう。

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