ふたりとも、これで世間を論破できたつもりでいるところがすごい。櫻井は自分が統一協会系団体で講演していた関係があるから、何があっても「問題ない」ことにしなければならないのだろうが、保身のために必死で嘘をついているという様子もなく、むしろすっかりカルトの思考に染まっているようにも見える。
これが「Hanada」になるともっとすさまじくて、「総力特集 統一教会批判は魔女狩りだ!」というページを組み、しかもその筆頭の記事の著者がなんと「世界日報特別取材班」だ!
いまや政治家は、過去に世界日報にインタビューが載っていただけでも「統一協会とつながりあり」と見なされて針のムシロに座らなければならないというのに、わざわざ「世界日報特別取材班」を、堂々と名乗らせて執筆させているのだから呆れる。
編集長の花田紀凱という人物は、どんなに人間的にモラルを欠いても商売人の嗅覚だけは鋭かったはずだが、ついにその鼻もカルトの毒にやられたらしい。
しかもそうまでして招いた世界日報による記事が言っていることが、「世界日報は統一協会の機関紙ではない」という、些細な問題に終始している。
前号の泉美木蘭さんの記事にあるとおり、厳密にいえば世界日報は統一協会の「機関紙」ではないが、「統一協会系新聞」であることは間違いなく、協会と一体であることに変わりはない。もちろん、泉美さんが前号で紹介した世界日報の闇の部分などには、一切触れてはいない。
花田は、こんなどうでもいい記事を載せることと引き換えに、自ら月刊「Hanada」は「統一協会の友好雑誌」であると宣言したのである。
「WiLL」、「Hanada」の安倍マンセー両誌には「安倍元総理の遺志をつぐ覚悟」だの「われ安倍イズムの継承者たらん」だのといった文言が並んでいる。しかも、藤井聡の「表現者クライテリオン」までが、表紙にデカデカと「岸田文雄は、安倍晋三の思いを引き継げるのか?」と打っている。
だが、「安倍晋三の遺志を継ぐ」って、なんだ?
わしに言わせれば、「完全な自虐史観屈服」、「完全な戦後レジーム追従」、それこそが「安倍イズム」であり、「安倍の遺志」ではないか!
安倍は「自虐史観の見直し」「戦後レジームの克服」を旗印にしていたはずなのに、第一次政権で首相に就任するや、河野談話を踏襲し、村山談話を踏襲し、東京裁判を見直す立場にないと表明した。さらにはアメリカに行って慰安婦は「20世紀最大の人権侵害」だと世界に向けて認めてしまった。
自虐史観の見直しが戦後レジーム克服の第一歩なのに、安倍はその第一歩から早々に全てベタ降りして、第二次政権においても一切見直すことはなく、そのまま死んでしまったのだ。
安倍が自虐史観の見直しをやらなかったのは、統一協会の教義に従っていたからだろう。そう見られても仕方がない。
特に一度どん底を味わった後の政権返り咲きと、その後の長期安定政権はまさしく統一協会のおかげだったわけだから、統一協会の教義を否定することになる自虐史観の見直しなど、絶対にやるわけがなかったのだ。
日本は戦前・戦中、アジアに悪いことばっかりやってきたサタン国家だ。特に韓国は併合までしてしまって、とんでもない悪を行ってしまった。
だから日本はその贖罪のために、韓国に永遠にお金を貢ぎ続けなければならない、という歴史観を安倍は恩義ある統一協会のために守り抜いたのだろう。
それで戦後レジームからの脱却なんかできるわけがなく、実際に安倍政権は、戦後レジームの通りのことしかやらなかったのである。
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