本質的な部分が欠落した自民“統一教会チェック”が信頼度ゼロな理由

 

今回の「点検」で、安倍元首相と細田博之衆院議長は対象から外された。それが、この点検報告の信頼性を著しく損ねている。自民党と統一教会の関係の本質的な部分が欠落しているからだ。

どこに問題の根源があるのかを究明するための調査でなければ、ほとんど意味はない。安倍氏は亡くなっているから調べようがないというが、そんなことはない。秘書や事務所スタッフがいる。資料も残っている。

統一教会が清和会の支援団体とみられてきたことは、知る人ぞ知る事実である。そして、教会票を誰に割り振るか差配していたのが安倍氏だったことも、伊達忠一元参院議長の発言で明らかになっている。

自民党は統一教会について、どのような団体だと考えているのか。今まで一度も見解を示したことがない。「社会的に問題が指摘される団体」と言うばかりだ。

自分たちが問題だと思うのではない。社会的に指摘されるから、「関係を持たないという党の基本方針を徹底してもらう」(9月8日岸田首相答弁)と、なんとも受動的な姿勢なのだ。

本来なら、「関係を持たない」と決めた根拠を明らかにすべきだ。統一教会がどんな団体だと認識しているのかを、はっきりさせなくてはならない。たとえばこのように。

人の恐怖心を煽り、高額な献金や物品購入によって救われると言って、日本の国民から巨額のカネを奪い取り韓国の本部に送金してきた教会に対し、我が党は何ら問題視しないどころか、選挙活動などを通じて協力関係を続けてきた。教会は議員を広告塔として利用し、信者のなかには自己破産、家庭崩壊にいたる人々が続出、社会不安を招いている。こうした事実を真摯に認め、反省するとともに、今後、教会との関係を完全に断ち切ることを約束する。

真っ向から統一教会を批判し、自己反省するとともに完全なる決別を宣言したのが上記である。せめてこれなら、明確な意思表示となる。

ところが、そうはいかないのが自民党だ。点検結果が公表された9月8日の記者会見で、「社会的に問題があると指摘される団体とは」と問われた茂木幹事長は、こう答えている。

「社会的問題であるかどうかについては、被害の実態等に照らして判断をされるものだと、そのように思っております。その上で、悪質な寄付の勧誘などで被害に遭われた方がいらっしゃる。こういう事実関係も踏まえて、社会的な問題が指摘されている団体については関係を持たないというふうに説明をされていると理解しております」

なにを言っているのかよくわからない。根拠があやふやなままだから、仕方なく決別宣言したようにしか見えないのだ。むしろ、「これからは関係を持ちません」と言うことで、過去を水に流そうとする意図さえ感じられる。

安倍元首相の国葬にしても、根拠が明確ではない。岸田首相は説明不足を問われ、「丁寧に説明する」と、9月8日、衆参両院の議運閉会中審査にのぞんだが、その中身は従来と寸分も変わらなかった。

「憲政133年の歴史の中でもっとも長い政権を担い、外交に大きな実績があった。海外からの弔意は日本国民にも向けられている…」

後付けの理屈をいくつ並べても説得力はない。巨額の税金を注ぎ込むというのに、国会の議論を経ず、内閣府設置法を無理やり根拠法として拙速に決めてしまったのが本当のところだ。

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