「早ければ2027年」台湾有事で国民脅す“ヒゲの隊長”佐藤正久議員の半狂乱

 

2027年に習近平は打って出る?

「台湾有事は日本有事」であり、「ズバリ“その時”はいつか?早ければ2027年、というのが私の“読み”」と佐藤は言う(P.140)。「私がそう言うのは、2027年が習近平国家主席の4期目を決める年だからです。習主席はかねて『国を強くする』と言い続けてきました」「『国を強くしたね』と国民から認めてもらうには、台湾を中国のもとに統一するのが一番。少なくとも台湾の離島ぐらいは占領しないと『強い指導者』にはなり得ない。本当は今すぐにでも行動を起こしたいのでしょうが、ロシアのウクライナ侵攻があり世界の目も厳しい。4期目の当選を決める2027年が絶好のタイミング、という訳です」(P.159-160)

「という訳です」という結び方をすると、いかにも習近平がそう匂わすようなことを語っているように見えるが、そんなことはなく、実はこの「2027年説」を持ち出して話題となったのは米インド太平洋軍デービッドソン司令官(当時)で、21年3月9日に米上院軍事委員会で証言に立った際にそう述べ、さらに「米海軍が米西海岸を出発して沖縄―フィリピンを結ぶ『第1列島線』に到達するのに約3週間かかる」と対処の遅れを心配してみせたのである。

佐藤が、上に引用したように「早ければ2027年というのが私の“読み”」と言い、その後すぐにデービッドソン司令官「も」そのような認識を示していると述べているのは、一種のトリックで、「自分は前々からそう考えていたところ、米司令官も同じことを言った」という印象を植え付けようとしている。もちろん嘘に決まっていて、米軍高官が言ったので喜んでそれに飛びついて、後付けで「それはきっと習が4期目に入って最終的に権力基盤を固めたいからだろう」と自分なりに理屈を立てたのだろう。

デービッドソン自身は何も根拠を語っておらず、文谷数重は「信じるに足りない内容である。中国脅威を強調する軍事委員会での発言である。しかも、6年以内も個人の勘でしかない。にもかかわらず大々的に報道され……それにより台湾有事論はさらに広がるのである。一種の自己増殖である」と切って捨てている。私も同意見で、米上院軍事委員会は軍産複合体のビジネスに奉仕する議員の溜まり場で、今にも戦争が起きそうだと言い立てて世界のあちこちに武器輸出を促すのが仕事なのだ。

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