「早ければ2027年」台湾有事で国民脅す“ヒゲの隊長”佐藤正久議員の半狂乱

 

有事になるのは台湾が独立を宣言した時

それにそもそも、習主席が「国民に認められたい」ために戦争を起こすという佐藤の想定が見当違いである。信頼すべき中国専門家の富坂聰が繰り返し言うように(例えば『「反中」亡国論』=ビジネス社、21年刊)、「圧倒的に多くの中国人が望んでいるのは『今日よりも明日はもっと豊かになる』ことであり、中国の影響力が他国に及ぶことではない。そして、この中国人の望みをかなえている限り、中国共産党の統治が脅かされることはない」というのが中国理解の基本中の基本であり、習が戦争をやれば国民が拍手喝采して彼の長期支配が固まるなどと思うのは、中国を知らない者だけが吐ける戯言である。

富坂が言う通り「中国にとっての優先順位は国民を富ませること」に尽きる。それにプラスにならないどころか致命的なマイナスにしかならない台湾武力統一を中国の側から突然、一方的に仕掛けることはない。従って、台湾統一は何年かかろうと平和的に解決するのが北京の基本姿勢である。

とはいえ、武力を発動しなければならない場合もある。それは、仮にも台湾が独立を宣言した場合で、それは「中国は一つ」という建国以来の国家的アイデンティティの崩壊であり、国土の一部の失陥であるので、断じて座視するわけには行かない。文谷は述べている。「台湾有事は台湾が独立を選択した場合にのみ生じる事態である。……台湾は独立の危険性を熟知している。台湾は中国に対し圧倒的に劣位にあり、単独で戦える相手ではない。また独立着手によって中国との全面交戦、台湾進攻を招くことも理解している。さらには台湾の繁栄に必須の中国との経済交流を失うことにもなる。だから独立は宣言しない」と。

これは、私も李登輝元総統を含む台湾の与野党要人、軍人OB、専門家、日本の真っ当な中国研究者などとさんざん議論してとっくに達している結論で、台湾人はみな「今が(多少の不便はあるけれども)事実上、独立している状態であって、無理に事を荒立てて中国軍を招き寄せる意味はない」と言うのである。

ただ蔡英文政権は実は人気が降下していて、「中台ゲームの駆け引き」でほどほどに緊張を高めることに意味があるので、中国側の言う「危なっかしい火遊び」に出、それにこれまた人気薄の米バイデン政権も便乗しているという関係である。従って、と文谷は端的に言う。「台湾有事をもたらす最大の要因は台湾政治……支持層におもねた李登輝政権や蔡英文政権の冒険主義にある。抑止すべきは台湾なのである」と。

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