電通出身の組織委員会元理事が3度にわたり逮捕されるなど、検察の容赦ない捜査が続く五輪汚職問題。巷間ささやかれている「政界の大物」の逮捕はあり得るのでしょうか。今回のメルマガ『上杉隆の「ニッポンの問題点」』では、ジャーナリストで『暴走検察』の著者でもある上杉さんが、田中角栄氏以来46年ぶりとなる、あの「元首相」の逮捕に言及。今後の捜査に対して一切妥協する姿勢を見せない、熱気に包まれた検察庁内の様子も紹介しています。
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【五輪汚職】検察の反撃(2)「本当に悪いやつは誰か」
前回のコラムに大きな反響があった。
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「本当に政治家の逮捕はあるのか?」
「東京高検検事長の落合義和氏が抜けているぞ!」
「初めて検察のことを応援したくなった」
実際、検察庁には数多くの激励の声が届いているという。これまで検察といえば、政治家の言いなりで、時の権力に逆らえないという印象が広まってしまっていた。
その印象は、黒川弘務氏の存在によって作られたといっても過言ではない。黒川氏の「検察官人生」は時の政治権力、具体的には安倍政権とともにあった。首相の力を背景に、圧倒的な影響力を誇示し、さまざまな「事件」に遠慮なく介入していった。
近畿財務局事件(森友問題)、桜を見る会、学校補人加計学園問題、TBS記者準強制わいせつ事件などなど、真相解明に至らず、捜査が止まったり、事件そのものが消滅したりしたもののどこかには、必ずといっていいほど黒川氏の影が見え隠れした。
『暴走検察』(2010年,朝日新聞出版)を著し、のちに検察の一部から蛇蝎のごとく嫌われるようになった筆者だが、実はそれ以前に当の黒川氏からは徹底的にマークされていた。
まだかつてのボスである鳩山邦夫法務大臣が存命で、筆者がジャーナリストとして文春や新潮や朝日新聞などに盛んに寄稿していた頃のことだ。
「おい、上杉くん、いまどこだ?ん、永田町?じゃ、四川飯店に来れるな。君の天敵がいるぞー。面白いやつだ。紹介する」
突然の電話を受け、東京・平河町の全国旅館会館の四川飯店を訪れると、法務省の官僚たちが鳩山大臣とともに杯を交わしていた。宴もたけなわといった感じで、鳩山大臣はかなりできあがっていた。
「お、来たか!こっちだ、こっちだ、うん、ここに座れ!」
そうやって、私を隣に座らせて紹介したのが、当時、秘書課長から大臣官房審議官になったばかりの黒川氏だった(あるいは松山地方検察庁から大臣官房付に戻ったばかりだった時かもしれない)。
「おい、ほら、黒川審議官、君がこの世で一番嫌いな上杉隆だ!さぁ、三人で乾杯、乾杯だ!」
バツの悪そうな雰囲気で、だが独特の人懐っこい笑顔を湛えて、黒川氏は鳩山大臣の言葉を否定するかのように首を振っている。
「そんなこと言っていないって?なにを、うそつけ。黒川審議官、君はさっきだって『けしからんですね、大臣。あの上杉ってゴキブリは、早く捕まえてやりましょう』と言っていたじゃないか!ほら、いまだぞ!逮捕しろ、逮捕だ、逮捕!(笑)」
第一次安倍政権で法務大臣に就き、第二次安倍政権以降でもいくつもの重責を担った鳩山大臣は、その後、黒川氏の「危険な目論見」をたびたび、密かにだが、筆者に教えてくれた。その目論見については別の回に譲ろう。
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