「楽天モバイルありき」から一転。周波数再割り当て協議で浮上した現実解

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プラチナバンドの再割り当てを巡る議論は、先日掲載の「3社が利用中の周波数をタダで奪おうとする楽天モバイルが浴びた苦言」で取り上げたように、雲行きに変化が生じています。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんが、9月26日の会合で強気の姿勢に変化を見せた楽天モバイルの譲歩案を紹介。さらに、ドコモが提示した資料から、楽天のユーザー数に対し割り当てる周波数の幅が過剰との疑念が明らかになり、この問題には別の解決策があるかもしれないと伝えています。

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楽天モバイルがプラチナバンド移行期間でやや譲歩。3キャリアから奪うより「狭帯域割り当て」が現実解か

9月26日、総務省にて「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース(第12回)」が開催された。4Gでは1.7GHzしか持たない楽天モバイルに対して、プラチナバンドを割り当てる前提で行われているタスクフォースだが、これまで楽天モバイルは「1年以内に再割り当てできる」という主張を展開していた。

しかし、今回の会合では新免許人が開設計画(置局計画)を必要な範囲で開示。開示情報に基づき、影響が想定される基地局にフィルタを交換。10年をかけて順次、楽天モバイルが周波数を使えるようにできないかという移行イメージが語られた。

3キャリアとしては「移行にはフィルタ交換などで10年かかる」と主張してたため、楽天モバイルが譲歩案を出してきたというわけだ。

一方で興味深いのが、先日のタスクフォースで有識者から「そもそも15MHz幅もいるのか」という意見が出されたことだった。その意見に対して、NTTドコモが新たな資料を出してきた。それによれば、15MHz幅では約5500万契約の収容が可能だという。NTTドコモでは「今回の検討において、当該周波数の利用目的、収容見込等を勘案し、当該周波数の有効活用に向けて適切な帯域幅を検討すべき」としている。

ちなみにNTTドコモの資料では、1.4HMz幅で510万、3MHz幅で1100万契約の収容が可能だとしている。つまり、現状の楽天モバイルのユーザー数であれば1.4MHz幅で足りることになってしまうし、今後、ユーザー数が倍増したとしても3MHz幅で充分ということになる。ちなみに通信速度は1.4MHz幅で下り12Mbps、3MHz幅で30Mbpsになるという。

楽天モバイルの主張は、15MHz幅が欲しく、3キャリアからそれぞれ5MHzずつ返してもらうことで、15MHz幅を実現したいとしている。しかし、それでは3キャリアそれぞれでフィルタ交換などの工事が必要となり、それぞれで1000億円規模の工事費がかかる恐れがある。

しかし、1.4MHz幅や3MHz幅であれば、どこか1つのキャリアだけが泣きを見れば済む話のようにみえてくる。いや、ひょっとすると、3キャリアからプラチナバンドを召し上げるのではなく、どこか別のところから確保するなんてことも可能だったりするのではないだろうか。

今回の法改正やタスクフォースは「楽天モバイルがプラチナバンドをもらえる前提」で話が進んでいるが、そもそも競願にかけ、3キャリアと比較して、楽天モバイルが電波の有効利用で勝ると証明するのは至難の業なのではないだろうか。

3キャリアは数千万規模のユーザーを抱え、電波を有効利用しまくっている。一方で楽天モバイルは500万ユーザーを超えたものの、ゼロ円廃止で契約者数の減少傾向にあったりする。楽天モバイルにプラチナバンドを早期に渡す目的を達成したいのなら、狭帯域をなんとか絞り出すという方向性も模索した方が手っ取り早いのではないだろうか。

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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