安倍氏国葬の強行が「極右政権誕生」の一里塚になりかねない理由

 

英オックスフォード大学「データで見る我々の世界」

ここは実に様々なテーマや角度から世界を見直すためのデータを開発し公開していて、我々ジャーナリストにとっては日常的な訪問先として欠かせないサイトだが、そこに9月6日付で掲げられたのは「世界は近頃あまり民主主義的でなくなってきた」と題したバスティアン・ヘーアの論文である。これによると、言わばAクラスである「自由民主国」の数は2012年には42、Bクラスである「選挙制民主国」は97でいずれも史上最高を記録したが、それらは21年には89と34に減った(図1:原本は「The world has recently become less democratic」)。

また、国は大小様々なので、民主的権利を享受している人口を見なければならない(図2)。しかも民主主義の状況は動いているから、かつては民主国だったがそうでなくなりつつある国とか、その逆とかも見る必要がある(図3)。独裁化しつつある国に住む人口は2000年に跳ね上がっているが、これはインドが「民主国」から「非民主化が進む国」へとランクが変わった影響が大きい。またブラジルの2億1,400万人、インドネシアの2億7,400万人、ポーランドの3,800万人も「選挙制民主国」から「非民主化が進む国」にランク落ちした。

まあこういう評価は、インデックスの取り方によるし、その際に西欧中心的な価値観が絡まないようどういう工夫がなされているのか、方法論的な問題まで検討しなければ俄には信用できない。しかし、例えば亡くなった安倍晋三元首相が「クアッド」を組んで「独裁国」=中国に立ち向かう軍事同盟にインドを「価値観を共有する国」と持ち上げて誘い込んだのは、本当にそれでよかったのかという話になる。少なくとも、インドが「民主主義国」として日本と同じ価値観を持っているから違う価値観の中国に対して一緒に戦うのだというのは、インドについてはもちろん、日本についてさえも自明のことではないのである。

英誌「エコノミスト」の関連部門EIUも年々「民主主義インデックス」を発表しているが、21年版のタイトルは「民主主義の下で暮らすのは世界の人々の半分以下」である。「政権タイプ別の国数」では、「完全民主国」21、「欠陥のある民主国」(日本はこれに入る)53、「どちらとも言えない国」34、「独裁国」59である(図4:原本「Democracy Index 2021: less than half the world lives in a democracy」)。

スウェーデン「民主主義・選挙支援国際研究所」

この分野で有名なのはスウェーデンのこの研究所で、実際の選挙支援活動を含め多彩な活動を展開しているが、その1つに「世界の民主主義状況インデックス」がある。ホームページからそのタイトルを探して入ると、最初にカラフルな世界地図が出てきて、大まかには「強民主国」「中民主国」「弱民主国」「どちらとも言えない国」「独裁国」に色分けされており、それぞれの国にカーソルを合わせると、4つのインデックスのスコアが出てくる。日本は少し薄い緑色の中民主国で、代表制の政府0.80、基本的人権0.84、政府への監視0.73、公平な政権運営0.72である。このインデックスの取り方による独裁国は49である(図5:原本は「The Global State of Democracy Indices」)。

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