(6)ということで、電通さんとか、スピーチライターがというのではなく、菅さんが信頼できる周囲と相談して自分でゴーを出した弔辞だと思います。
(7)一方で、岸田さんの弔辞はイマイチでしたね。「安倍さん、あなたは、まだまだ、長く、生きていてもらわなければならない人でした。日本と世界の行く末を示す羅針盤として、この先も、10年、いや20年、力を尽くしてくださるものと、わたくしは、確信しておりました」なんていうのはヨイショが露骨過ぎました。安倍さんに対してのヨイショではありません。保守派に対して、俺は安倍さんを尊敬しているから、お前らは俺を嫌いかもしれないが、応援してくれよというアプローチがミエミエだからです。
(8)そのくせ、新渡戸稲造がどうとか、「すべての人が輝く包摂的な日本を、地域を、世界をつくっていくことを誓」うとか、とにかく安倍レガシーを自分で引っ張っていって、その上で中道政治へのシフトをやりたい、そんな立ち位置に意地を張っている姿勢が露骨です。さらに言えば、そのためには保守派を無力化したいし、清和会を褒め殺してズタズタにしたいという「欲望」のヨロイが見え隠れするわけです。路線としては、構造改革を別にすれば、私自身の理解できる範囲とは遠くないのですが、こういう「歯の浮くようなセリフ」で政治ができるという発想は、かなりスキル的に疑問が残ります。もっとしっかりして欲しいですね。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年10月4日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
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