アベノミクスの大ウソが露呈。円安で確定した日本の“衰退途上国”入り

 

「円安」はいいことではなかったのか?

アベノミクスでは、「円安」はいいこと――それを打出の小槌としていいことの連鎖が魔法のように湧き上がって日本経済はたちまち元気を取り戻す、とされていたのではなかったか。円安にすれば、トヨタ自動車を筆頭とする輸出依存の高い大企業の円建てによる見かけ上の利益は途轍もなく大きくなり、それをみて株価は急騰する。そこへ日銀が異次元金融緩和でマネーをジャブジャブに供給すれば、とりわけ富裕層や機関投資家や大企業の財務担当者は、無金利に近い金をいくらでも借りて株式投機に狂奔するだろうし、それに釣られて浮き浮きした気分になった一般大衆も、もう少し先かと思っていた自家用車の買い替えや家の新築を繰り上げて大型消費ローンを組んだりするだろうと期待された。円安はまた訪日観光客の呼び込みにはまことに有効で、観光業のみならず飲食業、百貨店や薬局はじめ広く小売業を潤すだろう。

そうした効果は一時的に終わるに決まっているという指摘は、本誌を含め最初からあったけれども、アベノミクス陣営は「いや、それが起爆剤となって、ほんの2年の内にたちまちデフレから脱却してインフレ率2%は達成できるのだ」と言い張った。しかし、これが意図的な円安誘導による見せかけだけの好況気分の演出にすぎない以上、化けの皮が剥がれるのは当たり前で、そうすると安倍政権は日銀に国債を買わせ株式を保有させて何とかしてこの虚構を維持しようとした。そのため日銀は自縄自爆に陥ってまともな中央銀行としての機能をほぼ喪失し、その結果として日本の資本主義の支えである為替、株式、債券の3大市場は政府・日銀による事実上の国家管理下に組み敷かれてしまった。

もし岸田が今でも「円安」はいいことだと思っているなら、そう宣言し、理由を説明して、為替市場に介入するのを止めるべきである。もし介入するなら、アベノミクスの「円安」による見せかけの繁栄で国民の皆さんを騙して申し訳なかったと告白してからにすべきだろう。その肝心要のところをボカしておいて何やらよさそうな経済対策メニューを並べても、もう誰にも信用されないに決まっている。

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