MDRで米国防総省は「地上基盤の外気圏防御(GMD)は、ロシアと中国が空中や海上で発射する精巧な大型大陸間弾道ミサイル(ICBM)を迎撃するために作られたものではなく、その能力もない」とし、異例的にGMDでは中国とロシアを相手にできないという点を認めた。
このような脅威に対応する上で、米国は戦略的抑止、すなわち核兵器に依存せざるを得ないという話だ。GMDは、敵が発射したICBM(大陸間弾道ミサイル)が米本土に向かって飛んでくる時、中間段階でアラスカやカリフォルニアなどの地上に配置された迎撃ミサイルで、これを撃墜する防御システムだ。
これを受け、バイデン政権が一時採択を検討した「核先制不使用(NoFirstUse)」政策はきれいに放棄した。「米本土が直接核攻撃を受けない限り、先に核兵器を使用しない」と宣言した場合、同盟・パートナーに対するリスクが「容認できない水準」に達すると結論付けたのだ。敵国の核攻撃に対する抑止と報復目的にのみ核兵器を使用する「単一目的(SolePurpose)」政策もバイデン大統領の大統領選挙公約だったが、同じ理由で今回採択されなかった。
インド・太平洋地域ではむしろ米国の核兵器の役割が大きくなる様相だ。NPRで米国防総省はインド・太平洋地域の核抑止について「中国、北朝鮮、ロシアの核・ミサイル開発について漸増する憂慮を認識している」とした。このため、「より強い拡張抑制(核の傘)」が必要だとし、「米国は域内の核問題を抑止するのに適した柔軟な核戦力を引き続き展開する」と明らかにした。続いて「柔軟な核戦力」には「戦略爆撃機、弾道ミサイル発射戦略潜水艦、(核と通常攻撃がすべて可能な)二重用途戦闘機と核兵器の地域的、世界的前進配備」が含まれると述べた。北朝鮮と中国の核脅威に対抗して戦略資産を前進配置するという意味だ。