ICBMも発射か。北朝鮮「狂気のミサイル連射」が招く世界の混乱と緊張

 

例えば、「中国による台湾侵攻は、アメリカにとってのレッドラインに入るか」という問いについては、「通常兵器による侵攻には、通常兵器で対応する。もちろん背後には核が控えているが」という返答になるでしょう。

この時の“通常兵器”は飛び道具、つまり台湾海峡周辺に集う中国人民解放軍の射程に入らない距離からの弾道ミサイルでの攻撃が主になるかと思われますが、この場合、中国は極超音速ミサイルやグアムキラーなどで報復するでしょうし、もしかしたらICBMを発射してくるかもしれません。「中国の固有の領土である台湾にちょっかいを出してきたから、中国は自衛のためにアメリカ本土に向けて報復措置を発動する」という具合に。

どこかで聞いたようなロジックですが…。

中国も急成長中の核戦力であり、中国の極超音速ミサイルには核弾頭が搭載可能であり、アメリカや日本の防衛網では迎撃できず、また軌道もすでに北極経由のみならず、南半球に回り込んでの運用も可能という分析も出るほどの能力を持つとされているため恐ろしい相手ではありますが、台湾に核兵器を使用することはないでしょうし、また核兵器を先制使用することも考えづらいと見ています。

あくまでも中国が大事にするメンツをつぶされた場合、そして中国の“領土”が究極的に侵された場合、自衛の手段として核兵器の使用はあり得ると考えますが、中国本土に核が使用されるような事態でもない限り、中国が核兵器を使用することはないと見ています。

ただ中国が繰り返す多方面での威嚇行為は、アメリカはもちろん、アジアで張り合う核戦力であるインド、そして日本に対して繰り広げられるものであり、それぞれのレッドラインを探る動きでもあります。

日本に対しては尖閣諸島周辺海域や沖縄・石垣島周辺、そして最近は鹿児島県付近の海域に中国海警局や中国軍の空母攻撃群を侵入・通過させることで、日本政府や自衛隊の出方はもちろん、同海域にインド太平洋地域最大の軍事拠点を持ち、核の傘の範囲であると明言しているアメリカ政府と軍の出方も探っており、それぞれのレッドラインの見極めが行われています。

台湾自体は、その気になれば軍事的に叩けるという見方がまだ中国政府内では強いですが、問題はその際に米国、日本、豪州、英国、フランス、ドイツ、そしてインドがどのように対応するかによっては、現在のロシアによるウクライナ侵攻のように戦争が長期化し、中国の経済が疲弊し、同時に中国共産党のリーダーとしての正統性に対する反発が国内で起きかねない最悪の事態も想定しつつ、過去にアヘン戦争の際などに欧米に蹂躙された歴史的な恥を繰り返すまいと、決して弱腰な態度は取れないというジレンマに陥っているようで、勇み立つ軍部と懸念を強める政府の両方の意見を取り入れるためには、対決の可能性がある相手のレッドラインを探ることが方法になっているということです。

ここにもまさに世界の緊張と分断の最前線が存在し、見事に日本もその影響下にどっぷり浸かっており、有事の際には確実に負の影響を受けることになります。

国際情勢においてアメリカに対してレッドラインを探っている国で、国際情勢をより複雑にしているのはイランです。

オバマ政権下で多くの妥協を重ねて締結したはずの核合意も、トランプ政権の登場で滅茶苦茶にされ、その後、バイデン政権が誕生しても状況は変わらないことで、イランとしてはこれ以上、馬鹿にされることはできず、国内からの反発も後押しして、再度、対米強硬策に戻りました。

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