ICBMも発射か。北朝鮮「狂気のミサイル連射」が招く世界の混乱と緊張

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9月末からの短期間に、あたかも何かに取り憑かれたようにミサイルを連射する北朝鮮。11月2日に至っては1日20発以上を発射しましたが、何が金正恩総書記にこのような常軌を逸した行動を取らせているのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、その思惑を「米国のレッドラインを見極めるためのぎりぎりの賭け」と推測。さらに北朝鮮のみならず各国が見せている「レッドラインを試す動き」を列挙するとともに、日本にとってもそれは決して他人事ではないとの警告を発しています。

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レッドラインを試しあう緊迫の世界

「中国共産党大会が閉幕し、習近平国家主席の3期目の陣容が明らかになるにつれ、アジア全域に漂っていた霧が晴れ、一気に緊迫感が漂ってきた」

それを実感させたのは、習近平体制が3期目に入るにあたり、台湾併合への意欲を示したことでも、日本への威嚇のために中国艦船が鹿児島沖海域に侵入したからでもなく、今週に入って堰を切ったかのように連発した北朝鮮による弾道ミサイル発射です。

日本列島を横切り太平洋にまで到達するようなものはなかったようですが、11月2日には朝と夜に2回、11月3日朝には3発から4発の弾道ミサイル発射が実行されました(そしてまた夜に発射されたようです)。3日のミサイル発射については、うち一発がICBM級であったという情報があり、恐らく失敗したものと思われますが、火星17型(ICBM)であった可能性が指摘されています。

今回の弾道ミサイルの連射ですが、主因は米韓合同軍事演習への抗議と言われていますが、実際には【国際社会、特に米国のレッドラインを見極めるためのぎりぎりの賭け】というように特徴づけられると考えます。

これまでは、日本列島を横切ったものを含め、弾道ミサイル発射は中距離弾道ミサイル止まりで、以前の国連安保理対北朝鮮制裁決議違反か否かが微妙なラインに止めてきましたが、もし11月3日に発射され、約2,000メートルの高度で750キロメートル飛行したと思われるミサイルがICBMだったとしたら、それは明らかな安保理決議違反という判断が下されることになります。

まだICBMと確定診断されたわけではないようですが、ICBMが発射された可能性が“極めて高い”という多方面からの情報は、これから起こる混乱と緊張を予感させます。

安保理決議違反である場合、レッドラインを試す相手は安保理、特に米英仏中ロの常任理事国になるわけですが、現在、ロシアによるウクライナ侵攻に対する対応をめぐり完全に分裂しており、国連安保理が実質的にマヒし、中ロが新たな制裁に反対することが明らかですから、レッドラインを試す相手は安保理ではありません。

実際にはアメリカへの挑戦状と理解できます。

軍事的には北朝鮮を恐らく一瞬にして消し去るだけの核戦力を保有するアメリカですが、多様なミサイルを保有し、かつその精度が次第に高まっており、さらには弾道ミサイルに搭載可能なレベルまで核弾頭を小型化出来ていると言われている北朝鮮が自爆覚悟で周辺のアメリカの同盟国を攻撃するのみならず、米国本土を目指して核ミサイルが飛んでくる可能性も否定できないというのが、最新の分析です。

そのような中、反撃される危険性を承知の上で、アメリカが北朝鮮に対する攻撃に踏み切る可能性が高まるぎりぎりのラインを探っているのが現状と思われます。

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