ICBMも発射か。北朝鮮「狂気のミサイル連射」が招く世界の混乱と緊張

 

ではその日本ですが、同じく今、安全保障上、レッドラインを探る取り組みを行っています。

ロシアによるウクライナ侵攻に対する非難と制裁については、G7各国と方針を合わせて厳しく対応していますが、同時に自国のエネルギー安全保障上、ロシアからの石油・天然ガスの輸入を切るわけにもいかず、ロシアが設立した新生サハリンIとIIにも参画する決断をしました。

ウクライナ問題が何らかの形で終結した後の対ロ関係において、何とか関係回復のための糸口を、首の皮一枚でキープできたわけですが、相手がロシアですから安心はできません。

ただサハリンIとIIにまつわるロシアの態度を見ている限り、まだロシアのレッドラインは踏み越えていないものと思われます。とはいえ、散々いじめられていますが。

もう一つのフロントは、対中国と対北朝鮮の安全保障・自衛の問題です。専守防衛を謳う自衛隊を保持していますが、敵地攻撃はまだ許されていないのが現状ですが、そのような中、北朝鮮が頻繁に弾道ミサイル発射によって直接的に威嚇し、中国は海軍と空軍を用いて、日本の領海・領空侵犯を繰り返し、かつ尖閣諸島問題で挑戦を受けている中、これまでは確実になめられてきたように思えます。

自衛隊の装備も能力も非常に素晴らしい半面、それを用いることが出来ないというジレンマが長年続いてきましたが、昨今の安全保障環境はそのジレンマを解決すべく、政治的な議論を進めることに寄与していると思われます。

それが今週に出てきたHSCM(極超音速巡航ミサイル)とHSM(極超音速ミサイル)を日本に配備し、日本に対するミサイル発射の兆候が見られた時に、予防的な措置としてではなく、そして受け身の姿勢ではなく、それらの迎撃不可能とされるミサイルをもって敵地を攻撃するようにしようとする動きは、大きな危機感を示すものと思われます。

確実に国会においてまた激しい論戦の的になるかと思いますが、ここはイデオロギー的な議論ではなく、真に国民の代表として国民の安全と国家の存続のためのベストチョイスについて議論し、迅速に決定・実行に移してもらいたいと思います。

現状にそぐわない議論を繰り返し、その間に致命的な攻撃を受けることこそ、日本にとってはレッドラインを超える内容だと考えます。

今の国際情勢は、いろいろな形で相互にレッドラインを突き付け、互いにそれを踏み越えないぎりぎりのラインを探りあう、非常にデリケートでかつ緊迫感に満ちた世界と言えます。

そのような中、私たちはどう考え、行動すべきなのでしょうか?その問いが私たち一人一人に突き付けられています。

以上、国際情勢の裏側でした。

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