ICBMも発射か。北朝鮮「狂気のミサイル連射」が招く世界の混乱と緊張

 

なぜならば、これまでクライシス・ネゴシエーションを多数行ってきた経験から、銃を構えて見せびらかしている人間が銃を実際に使用することは極めてまれであり、本当に撃つ人は銃を出したとたんに確実に発射するという心理を見てきたからです。

ものが核兵器なので慎重を期しておりますが、心理上、使うぞ!と脅している限りは使いませんし、少し乱暴な言い方をしますと、そのおかげでこれまで核兵器が使われずに済んでいると考えています。

ただ可能性はゼロではありません。

私が非常に懸念しているのは、ロシアとプーチン大統領を国内外において追い詰め、その座から追い落とそうとするような動きを察知し、「もはやこれまで」と考えた際には、子飼いのショイグ国防相を説得できれば、自殺兵器としての核兵器を使用するかもしれないという分析が最近出てきたことです。

対ウクライナでの核兵器使用については、最近プーチン大統領の脅しもトーンダウンしているように思われますが、相変わらず世界最大の核兵器保有国の核のボタンの主であることには変化はありません。また最近、ロシアの利益の防衛、ロシア人の生命の防衛、そしてロシアの国土の防衛というtermがよく見受けられるようになり、ロシア政府による自衛権の行使の手段としての核兵器使用を想像してしまう雰囲気を醸し出しているのもとても気になります。

私の思い込みかもしれませんが、同じようなことをプーチン大統領の近くにいる人たちからもちらほら耳にするようになってきました(一応、調停準備のため、話し合いはしないといけないので)。

レッドラインを試しているのはNATO、特にアメリカも同じです。「プーチン大統領をあまり追い込むべきではない」というのはホワイトハウスも国務省も、そしてペンタゴンでも共通認識と聞いていますが、かといってロシアの行動に対しては厳しく非難する必要もありますし、ロシアの暴挙を挫かせる必要性にも駆られていることから、アメリカはプーチン大統領のレッドラインを踏み越えることがないように最新の注意を払っているようです。

「ロシア軍は戦術核兵器・小型核兵器の使用を、通常兵器使用の延長線上としか取られておらず、非常にカジュアルに投入する可能性は否定できない」

「Mr.アルマゲドンはすでにシリアで化学兵器を投入した前科があり、核兵器使用も厭わないのではないか」

「ロシア・プーチン大統領との話し合いのチャンネルを閉ざしてはならない」

「状況的にはアメリカから供与した武器が効果を発揮しているが、そろそろ供与も物理的に限界点に近づきつつあり、タイムリミットは迫っている。アメリカが手を退いたら、恐らくウクライナは終焉する」

「NATO加盟国や同盟国へのロシアからの攻撃がない限りは、ロシアと直接的に対峙してはならない」

「ロシアと交渉する必要は否定しないが、それがプーチン大統領と体制の延命を意味するものではあってはならない。それはロシアによる暴挙を認めることになってしまい、ロシアはまた懲りずに同じことをウクライナ、そしてその周辺国に行うだろうから」

いろいろな見解を表明しながら、プーチン大統領の腹の内を探ろうとしているのが分かります。

ちなみにアメリカにとって、ロシアに対する核による報復に踏み切るレッドラインは

  • 自国への核攻撃
  • NATO加盟国への核攻撃
  • 同盟国への核攻撃

だと考えられますが、ここに

  • ウクライナに対する核攻撃

が加わるかは、実際には微妙です。悲しい現実ですが。

このアメリカの出方を非常に複雑にしているのが、中国による台湾侵攻の兆しと、3期目を確実にした習近平国家主席の強硬姿勢が“何を意味するのか”を見極め、インド太平洋地域における“同盟国”に対する防衛および核の傘の提供の度合いを見極める必要性です。

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