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LIJIANG, CHINA, MARCH 8, 2012: Statue of Mao Zedong in central Lijiang. The city is famous for its UNESCO Heritage Site, the Old Town of Lijiang.

なぜ、毛沢東はあれほどの悲劇を起こしたのに中国で崇拝されているのか

 中国では厳しいゼロコロナ政策が推進されています。国民が苦しい思いをしながらも、習近平に文句を言えない理由はどこにあるのでしょうか。今回の無料メルマガ『出たっきり邦人【アジア編】』では、中国・深圳在住のMochiさんが、 中国内部の今の状況と習近平と毛沢東の共通点について語っています。

『華南の風』中国・深セン【19】新皇帝

皆さんこんにちは!

連続核酸検査が半年に達しようとしているMochiです。

深センの隣の隣にある広州市、北京市、重慶、成都では数千人レベルでの感染が発生しており、顧客の工場がある成都では高危険地区が数十か所に達しているとか。

高危険地区がある都市からの来訪者の扱いは都市によって異なります。例えば深セン市は成都から深センに来る前の3日間他の都市に滞在していたという証明が出来なければどのホテルも宿泊を拒否します。一方で福建省の厦門市では高危険地区在住でなければ48時間以内の核酸検査陰性証明があればホテルに泊まることが出来ます。

結局Mochiのお客さんは深センに来るのを諦め、厦門市のみの訪問となりました。行く方も迎える方もコロナ政策に翻弄され、結局出張を見送らざるを得ない。程度の差こそあれ、どの都市でも行動範囲が縮小してしまっています。

そんなゼロコロナ政策を推進するのが習近平国家主席。

去る10月の共産党大会で、大方の予想通りに3期目の国家主席に選ばれました。2期を上限とするという規定を廃棄させ、着々と根回しを進めていたのでしょう。経済政策に強く、何かと意見が異なる李克強首相をクビにし、あれだけの大流行と全市の長期ロックダウンを引き起こした上海市長を昇進させるなど、周囲をイエスマンで固めました。もう誰も彼に物言いが出来る人間はいません。新しい皇帝の誕生です。

彼はかねてから毛沢東を引き合いに出すことはよく知られています。そして毛沢東のように後世に名を遺す野望を持っているとも。

中国の学校ではサラッと流されてしまう、毛沢東が引き起こした悲劇に大躍進と文化大革命があります。

大躍進は極端な共同社会化で、経済音痴の毛沢東の大失策で3,000万人もの餓死者が出たそうです(これを模倣して大虐殺を行ったのがカンボジアのポルポト)。文化大革命は共産主義以外の文化と知識の否定でしたが、大躍進の失敗により失脚した毛沢東が無垢な学生たちを裏で扇動して引き起こしたとされています。

Mochiはゼミの教授が近現代中国史研究だったせいで辛亥革命以降の中国について熱く語られ続けたわけですが、毛沢東を中心とする初期の共産党を知れば知るほど嫌いになるというサイクルに陥ってました。そんなわけで個人崇拝レベルまで偶像化された毛沢東に非常に違和感を感じるわけです。

さて、そんな毛沢東を崇拝する習近平ですが、常軌を逸したゼロコロナ政策、瀕死の重傷患者が「緑の健康コードを提示できない」が為に病院に入れず外で亡くなってしまう。中国有数の商業都市である上海を丸ごと2か月間ロックダウンさせてしまう。「ほぼインフル」レベルのオミクロン拡大に備えて広州市に40万床の感染者施設を建設する。などちょっと中国以外の国々には理解不能な施政です。

でも誰も意見を言えない。政敵はみんな牢獄送りか閑職に追いやってしまったからです。この辺は大躍進の時と似ていますね。

文化大革命では感化された学生が「紅衛兵」を名乗り暴動を起こしましたが、今はコロナ対策実行部隊が「白衛兵」と揶揄されあちこちで問題行動が報告されています。感染者の部屋を消毒する際に吠えた飼い犬をこん棒で殴り続けて殺してしまう動画は多くの怒りを呼びました。みんな全身を覆う白い防護服を着ているので中に入っている人がどんな人なのかわからないんですね。「コロナから社会を守るため」なら何をやってもいいような風潮は「毛沢東語録」に反する思想、人々に対しては何をやってもいいと暴走した紅衛兵とそっくりです。

多分4期、5期と可能な限り権力の座に座り続けようとするでしょうが、ワンマン政権だけに大失敗をすれば責任逃れは出来ないわけで、江沢民派やトウ小平派はそれまでじっと我慢の子という感じでしょうか。

ゼロコロナ政策は自身が3期目に入るために感染拡大という汚点をつけるわけにはいかないというところから来ていて、順当に3期目に入ったら緩和されるのではと勘ぐってましたが、その共産党大会でゼロコロナ政策継続を宣言しました…がっかりです。

なんと奇跡的に会社から一時帰国の許可が出ましたので3年ぶりに日本の地を踏み、新年を日本で迎えることになりました。

景気がどん底ですが、久しぶりの日本に心が躍ってます。

だいぶ早いですが、皆さん良いお年をお迎えください!

(『出たっきり邦人【アジア編】』11月19日号より一部抜粋)

著者/Mochi(「『華南の風』中国・深セン」連載)

image by: aquatarkus / Shutterstock.com

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【著者】 アジア6カ国の在留邦人メンバー 【発行周期】 週刊

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